ニコンCOOLPIX A。同社唯一のAPS-C搭載、幻の高級コンデジ。

Nikon COOLPIX A

NikonニコンCOOLPIX Aは、デジタル一眼レフカメラなどにも搭載されているAPS-CセンサーのDXフォーマット、及び28mm単焦点レンズが採用されているのが最大の特徴。デジタルカメラにとってセンサーは、画質に影響する心臓部分でもある。これが大きい高級コンパクトカメラは、小型でありながら一眼レフにも引けを取らないような写真が撮れる魅力があり、メーカー各社が技術の粋を結集して開発を手掛けていたりする。

フィルム時代からデジタルに至るまで、高級コンパクトカメラからは多くの名機が生まれているが、ニコンはこの分野からは事実上撤退してしまった。このカメラも後継機種の開発は放棄され、現行品もディスコンとなってしまっている。各社が開発に取り組む1インチセンサーを搭載した製品ですら、販売直前になってから思わぬ中止となってしまった。ニコンが生んだ高級コンデジは正に幻。COOLPIX Aはその象徴というべき稀有けうな存在なのである。

Nikon COOLPIX A、一眼レフにも匹敵する描写力。

COOLPIX A。凄みある圧巻の解像力。

COOLPIX Aの魅力は、その光景を緻密に写し取る能力の高さにある。コンパクトカメラ特有の小さな体からは想像もつかぬ程、実物の立体感をシッカリと再現してくれる。それはやはり裏面照射型CMOSセンサーのAPS-C型が採用されている事も大きい。このカメラの絵筆が描き出す、写真の優れた描写は特筆すべきものがある。

その全体像としては、あまり先鋭的すぎず落ち着いていて、丸くまとまったような優秀なカメラであると言える。写りの特徴としては、ノイズに対する耐性も比較的高い点。そのセンサーはローパスフィルターレス仕様で、モアレや偽色の対策よりも解像力に注力している点。それから専用に設計された28mm単焦点レンズの性能が優れている点が挙げられる。それらが相まって、APS-C一眼レフに比肩ひけんする程の、いやそれ以上の画質が得られているのである。

質実剛健、しっかりと構え撮る。

またニコンの販売するコンパクトデジタルカメラ、クールピクスの頂点に君臨するフラッグシップモデル。それがこのカメラであることをアルファベット”A”のみというネーミングが証明してくれているようである。まさにその写りは、「究極のCOOLPIXクールピクス」の名に相応しい。

高い水準で調和する。レンズとセンサーの性能。

このCOOLPIX Aに搭載されたセンサーの画素数は、約1616万画素と適度な塩梅。その為高い諧調表現を維持しながら、ノイズに対しても極めて高い耐性を秘めている。RAW現像の際にも、その恩恵に授かる事は間違いない。このように安易に高画素競争に乗らず、より写真の質に注力し、それを向上させんとする玄人志向な設計思想は好印象。そうした部分から見ても、この機種は丁寧にバランス良く作りこまれていることが伺える良品である。

ふわふわとした毛並み、一本一本を解像。

そのレンズは28mm単焦点レンズ、開放F2.8からと比較的無難な明るさをしている。設計に無理がない分、絞り全般で優れた光学性能があり、解像力も高い。ただし開放付近では周辺減光が比較的出るため、このクセを把握したうえで運用したいものである。F8以上に絞って使用する分には特に周辺減光が問題になる事もないため、パンフォーカスの風景写真などでも大いに活躍する。

より絞り込み、光と影を活かす。

それにコンパクトカメラというからには、ズボンのポケットに放り込んで何時でも何処でも撮影したいというもの。他の高級コンデジの中には、レンズなど突出部が大きく、これが出来ない製品も少なくない。対してこのカメラはAPS-Cセンサーを搭載していながら、ポケットに入るほど小型に設計されていて、その点において大きくアドバンテージを有する。

手ぶらで出かけられるという恩恵は何にも代えがたい。一眼レフ並みの画質を誇るカメラがポケットにあるという頼もしさ。ただ取り出して眼前の情景を切り取るという楽しさ。そんな風にいつでも写真を撮る事の出来る贅沢に浸る。それはこのカメラが、スナップ写真を撮るに際しても十分な力を発揮できる性能を備えているからこそ、為せる業である。

ただ眼前の情景を撮る、という贅沢。

昨今、カメラなどの精密機器に至っても発展途上国製のものが多く見受けられるようになってきた。そんな時にこのカメラの日本製との表示は、何処か嬉しくもあり、所有する喜びも大きい。しかし、このカメラにはリコーGRという有力なライバルの存在がある。結果的にブランド戦略としては水を開けられたとはいえ、写真機としての個別具体的価値は、むしろ誇らしく優れた製品なのである。

所有欲を満たす、幻の高級コンパクトカメラ。

高級コンパクトカメラというものはフィルムの時代から存在する系譜。各社が競って製品化を行い、奢侈しゃしでありながら実用的、そんな素晴らしいカメラが誕生し続けてきた分野でもある。フィルムカメラでいえば、Minolta TC-1CONTAX T3Nikon 28Tiなど名機がいくつも誕生した。そうしたカメラの特徴は、やはり高品位な外装、それから高い描写力のレンズであった。

美しい、高級コンパクトカメラ。

このNikon COOLPIX Aの特徴も、その伝統を引き継いでいる。外装は高級感と耐久性のある金属素材。アルミニウム合金とマグネシウム合金で包み込まれている。それでいながら過度な装飾は一切なく、質実剛健でミニマル。常に撮影に没頭できるシンプルな外観は、目的を確実に達する為に存在する道具としての魅力に溢れている。

光学機器の老舗メーカーとしての安定感や信頼感あるレンズの設計技術。これらは、高級コンパクトフィルムの正統な後継者としての立ち位置を担っている。それだけに、ニコンがこの高級コンパクトという分野から事実上撤退してしまった事は、カメラ界にとって損失であると言わざるを得ない。資本主義経済の中で営まれた生業である以上、これは致し方のない事柄。しかしながらニコンが注いだ心血は、このCOOLPIX A孕子はらみごとして宿り続けるものである。

写真機として、高いクオリティを保持。

さてニコンの開発陣は、フォーカスリングとしての回転式の操作系に非常に拘り、念入りに作り込んでいるという。確かにレンズの根元に位置するその操作リングは実際に使ってみると兎に角滑らかでいて、気持ちよく回転させる事が出来る。テーブルフォトのマクロ撮影などでも活躍するMFマニュアルフォーカス。そのMFで使うことになるフォーカスリングの作り込みは嬉しいところである。長年、カメラ作りに身を投じてきたメーカーとしての心意気が感じられる部分でもある。

画質、操作性、耐久性、そしてシステム性。カメラとして備えるべきあらゆる資質において、COOLPIX Aは、プロフェッショナルの要求にも応えるニコンDXフォーマットデジタル一眼レフカメラに比肩する、極めて高い能力を秘めている。コンパクトカメラであることを誇りを持って主張する、小型軽量でシンプルなフォルム。他とは一線を画す、自信にあふれた高い質感。COOLPIX A。撮る喜び、持つ喜びをいつも感じていたい、すべての人に。

Nikon CoolpixA-基本コンセプト

日常を最高のカメラで残す。マクロモードも搭載。

また最短撮影距離については、通常50cm以上である。しかしこの機種にはマクロモードが搭載されていて、このモードを使用する事で最短10cmまで寄って撮影することが可能になる。この機能がある事によって、料理写真テーブルフォトも非常に撮り易い。その電子シャッターは、とても小さな音なのも嬉しい。ただしこの場合、AFオートフォーカス合焦の速度が通常モードよりも遅くなることには注意しておきたい。

思い出のひと時を、その手に。

この小さな体躯の中に潜む、素晴らしい性能によって仰々しい撮影が不必要。そしてそこで得られるボケ量の多さに頬が緩む。例えば旅先でのレストランやカフェなどで使用しても何ら違和感なく、素早く撮影して素早く片づけることが出来る。日々持ち歩き、日記や記録的に撮影するような使い方にも良い。

Nikon COOLPIX Aの作例

─ COOLPIX A 

歩くという行為。それは、いつも発見という喜びを伴う。歩くという行為。それは、人生という旅路そのものである。その道中で出会う、魅せられる景色。傍らに居てくれる存在は、ただそれだけで頼もしいものである。歩くという行為。それは、”彼ら”とともに歩む旅路…。

Nikon COOLPIX Aの使い方と外観

このカメラはシンプルである。それでいながら、拘られた意匠いしょうを感じる。手に収めたときの金属ならではの存在感のある重さ、約299g(バッテリー、SDカード含む)は重すぎず軽すぎずという絶妙なラインだと思える。このちょうど良さによって、手持ちで撮影するとき手振れが極めて抑えられる気がする。

軍艦部は分かりやすい配置。

使い方は簡単。ニコンやキヤノンの一眼レフを普段から用いていれば、特に問題になることは無い。ON/OFFはシャッターボタンの枠、レバーを引くだけ。シャッターボタン半押しでAF起動。全押しでシャッターを切る。

上から眺めたときの上質さが良い。

モードダイヤルで、シャッター速度優先AE、絞り優先AE、マニュアル、プログラムオート、全自動、シーンモードなどを変更することが出来る。ダイヤルスイッチで絞りやシャッター速度などを変更する。

特に手にしっくりと馴染む質感。金属感が高級感を持っている。上部から眺め見た時の上質なプロダクトデザインは、お気に入りのカメラになること請け合いである。

両手で操作したいカメラ。背面の操作系。

ニコンやキヤノンの一眼レフ利用者だとすれば、一切迷うことが無いと言ってよい程、使い勝っての良いユーザーインターフェイス。

背面の操作系。両手で細かい操作。

背面の操作系統は、両手を同時に使って素早い設定変換を容易なものとする。リコーGRなどではスナップを意識し、片手での全操作が可能になっているが、やはりCOOLPIX Aのように物理ボタンがあると、何より素早く操作可能。更に両手を用いて設定を変更する方法が採られていることで、しっかりとカメラをホールドして撮るという使い方のほうが、よりシックリと馴染む。

電源、撮影モード変換、シャッター、ISO感度、露出補正±、再生など各々が物理ボタンとして独立している為に、直感的な操作が可能。一眼レフを同時に併用し、操作していても、違和感がなく撮影に没頭する事が出来る。

撮影で何かと使用することの多い、ISO感度の変更や露出補正±なども簡単にアクセスできる。この点も一眼ユーザーからみると非常に扱いやすい直感的な操作系だと言える。そして、何気なく右上に配置されたグリップ力の極めて高いゴムの存在も案外重要。この配慮によって親指による力強いホールドを援助してくれる。

フロント部のファンクションボタンが良い。

撮影者の意図に合わせて、ボタンの配置や役割を割り振ることが出来るファンクションボタン。フロント部のFn1と背面の液晶横のFn2の二つが用意されている。特に使い易いのがフロント部に配置されたファンクションボタンで、ここにAEロック(露出固定)やAF開始を設定する事で非常に便利になる。

ファンクションボタンとフォーカスリング。

例えば、この位置にAEロックを設定すれば、ニコンのフィルム一眼レフでもあるF3FEなどの操作系を思い出す。それらはフロント部に設置されたボタンでAEロックを行う構造になっていた。この方法はまさにそれと同様の使い方が出来るもの。使いやすく、多用するファンクションボタンであるから、是非覚えておきたい。

更に同じくFn1ボタンに、AF開始を設定することも出来る。これによって例えば三脚に据えて撮影する際においても、シャッターボタン半押しでAFが開始される事を予防することが出来る。シャッターとボタンを分離する事で、毎回ピント位置を設定しなおす手間がなくなるのである。

三脚に据え置いて撮影。

ちなみにAF開始やAEロックが設定可能なのは、このフロント部に設置されているFn1ボタンだけである。二つを同時に割り振ることが出来ない。ただしこの場合、三脚に据え置いたあとはMF操作に切り替えて撮影する事で、上記と同様の問題になることは無い。しかもスムーズで扱いやすいフォーカスリングは、正確な合焦を手助けしてくれるのである。この点、開発陣も特に力を入れた使い勝手のポイントであるのだから、積極的に使っていきたいものである。

レビュー:しっかりと構えて撮るコンデジ。

COOLPIX Aは、そのディティールを捉える。

COOLPIX Aで撮影した写真を見て明らかに驚きであったのは、やはりその画質の良さである。裏面照射型センサーとローパスフィルターレスの恩恵によって、またその性能を遺憾なく発揮させる秀逸な小型レンズによっても、しっかりと解像した写真が撮れる。約1616万画素である事を感じさせない、それどころか寧ろもっとあるかのような錯覚さえ覚えるのだ。それをコンパクトに持ち歩くというだけでも、写真表現の幅は確実に広がる。

それに一眼レフと併用しながら交換レンズの代わりとしても運用できる描写性能は実に素晴らしい。ニコンのAPS-C規格は、キヤノンの同規格と比べて若干大きなセンサーを積んでいる事もあって、キヤノンのAPS-Cセンサーの一眼レフよりも物理的な優位性を持っている。その点では、キヤノンユーザーにとって併用の悦びは大きい。

撮るという行為への没入。

やはりカメラといえば、ファインダーの存在が「撮る行為」に対する没入感を更に高めてくれる。COOLPIX Aにおいては、デフォルト仕様ではこうした機能はない。この点の思想は、リコーのGRと同様のものがある。無駄を省くことで、大型センサーにおいてもポケットに入る程のコンパクトさを保つことが出来ているのだから仕方がない。ただしアクセサリーとして、光学式ファインダーが用意されていたりもする。

COOLPIX Aの特に優れたところ

無駄な機能を可能な限り省き、写真を撮る行為のみに適した佇まいは好感が持てる。同様の路線のカメラとしては、リコーのGRというコンデジがあるが、これと設計思想を同じくしているようだ。しかしそれと比してみて鑑みるにCOOLPIX Aはスナップシューターというよりは、しっかりと構えて撮るようなカメラである。

陰影と石垣の質感。

高級コンデジの中にはコンデジという名でありながらレンズやファインダーなど多くの意匠が施され、カバンが必要になる製品も少なくない。COOLPIX Aはこの点素晴らしく機能的。コンパクトカメラである事を弁えている。写真を撮らんとする目的はなくとも、ただ懐にこのカメラを忍ばせておくだけで良いのだ。

上位の一眼レフカメラと同様に金属素材の外装が施してある事により高級感がある。また操作系がそれらと近似していて、ピントも速さよりも正確性を重視した設計のようで、さながら極小の手乗り一眼という感じも受けるものである。

高級感のある外装。撮影が楽しくなる。

他社にもフルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズなど大型センサーを搭載した高級コンパクト機種はいくつか存在するものの、「ポケットに入る大きさ」という点を考慮すると、この条件を満たさないものも多い。つまりこの機種は、コンパクトでありながら大型センサーを搭載しているという点で及第点を得ている。

COOLPIX Aで、夜の街を散策する。

なかなか難しいのが、夜のスナップ写真。三脚を持ち歩かず、一眼レフを持ち歩かずに日が落ちてから暫くしても、ISO感度をあげ、F値を下げ、シャッター速度を遅くすると撮影できる。最終的にはマニュアル撮影で、小脇を閉めて撮影。そんな風にすると案外耐え忍んでくれる。上記写真は、シャッター速度1/25秒、ISO800、絞り値は開放のF2.8で撮影。こうした状況下でも、コンデジであることを忘れさせてくれる。

COOLPIX Aの苦手とするところ

色というのも個人的な好みに左右されるのであるが、ニコンは忠実色だと言われる。その説明よろしく、撮って出しの場合の味付けは比較的あっさりしている特徴がある。しかし現実よりももっと黄色っぽい色温度になるようである。この場合、確実にRAW現像によって色温度や色被りの微調整が適宜必要である。

モノクロームの絵作りに好感。

ところが、モノクロームでの撮影ではカメラ内現像で十二分の活躍。撮って出しの素晴らしい絵に驚嘆する。その絵は活力に溢れ、極めて優れた描写性能を遺憾なく発揮する。撮影している最中でも、背面液晶に映し出される写真に喜びは深まる。

ちなみに埃に対する耐性が低い点も苦手とする分野であるといえよう。コンパクトカメラ全般に言えることでもあるが、侵入した埃がセンサーに付着し絞り込んだ際に大きく映り込むことがある。解放で使用する分には特に問題になることもないのであるが、絞った際に映り込むようなゴミの混入は死活問題となる。

モノクローム撮影なら、カメラ内現像が良い。

それから巷でいわれるのがAF性能について。しかし基本を中央一点AFに据え置いて撮影することでその問題について特に心配になった事は無い。このカメラは、歩き回りながら片手で素早く撮影するというよりは、じっくりと両手で構えて構図を練って撮影する、というようなスタイルにより合致する。時にはフォーカスリングを回し、MF操作を楽しみたい。

コラム:デジタルで、モノクロームを楽しむ。

デジタルだからこそ、今モノクロを。

写真の歴史は1800年代に始まり、一般化されるのは1900年前後。浅い歴史の中でも、当初用いられた表現方法は当然ながらモノクロームである。この古典的方法においては、水墨画のように濃淡が重要になる。濃淡差は所謂いわゆるコントラストで、この豊かさが写真そのものの質を左右する。

モノクロームの時代。自然風景写真の大家といえばアンセル・アダムスだと言えるが、特に彼が前面に出す光と陰のコントラストは非常に美しい。もちろんカメラの発展によって、特にライカなどによって写真が一般化されはじめると、アンリ・カルティエ・ブレッソンやドアノーやロバート・キャパなどによっても写真文化が花開いた。この時代に有名な写真家は、日本人も含めて綺羅星のように輝いて見えるものである。

そうした偉大な写真家たちの写真に触れ、または実際にモノクロで撮影してみる。色という情報を省くとかえって奥深い世界に入り込んでいくことに気がつく。それはシンプルさが故に得てして奥深いという命題が成り立つもの。

実は以前には一般的だったモノクロネガフィルムは、現代の一般的なカメラ店の現像方法とは異なる。依頼しても発送、外注による現像を行う場合が多くなってしまった。そんなとき頼もしいことに、デジタルによるモノクロ撮影という手段が残されている。当たり前であるが、これには現像に伴う手間を一切省くことが出来る利点がある。

ちなみに一応にはC41カラー現像できるモノクロフィルムも存在している。しかしそれも風前の灯火ではあるが、イルフォードのxp2スーパーなどという方法が無い訳ではない。少し前には、コダックにおいてもBW400CNという製品で行うことが出来たが、これもまた製造販売を中止してしまった。

さて、デジタルカメラでモノクロという表現を扱ってみると、その奥深さに驚嘆する。日頃見ていた風景がちょっとした工夫や視点、状況によって一気に素晴らしい風景へと変化する。もちろん写真というもの自体がそういう示唆を与えてくれるものだが、モノクロにはまた違った変化の楽しさがあるようだ。そして写真の撮り方を探る一助となってくれる。

それを練習することで間違いなくカラー写真の質も上がることと思われる。特にCOOLPIX Aのような小さなカメラを持って街角をぶらり。そんなちょっとした変化がもたらす大きな発見が嬉しい。未だ技術的にラチチュードが、ネガフィルムと比して狭いとの評価を受けるデジタルである。だからこそそれを活かすようにコントラストに着目すれば、モノクロームとの相性がとても良い。

ところで写真というのは、構図など基礎基本を学ばなくてはならないと思いがち。そんな中、写真関連の書籍といえばハウツー本のようなムック本が溢れている。しかし写真の愉しさというのは、自らの視点や視野、価値感や世界観などを他者と共有できるという事でもある。つまり他者との感性の共感。これが醍醐味なのではないだろうか。今を生きる写真家や過去を生きた写真家の見る世界を我々が共有できる感動を味わいたいものである。

時には写真集を開き、アルバムを開き、そうして他者の価値観を共感したいものである。

モノクロームをカラー表現するAI。

カラー写真が一般的になった今日においては、敢えてモノクロームの写真表現が相応しく意図を表現できる場合もある。しかし旧来の写真はカラーという表現を用いたくても、技術的問題が立ちはだかっていた。人々はその枠組みの中の最適化を目指すものである。

そんな中、以前のモノクロ写真をカラー写真として嗜む事も出来ないものかと考えるのが、我々のさがのようなものではないだろうか。そんな夢のような話も今日のAI技術の発展によって実現、モノクロ写真を自動着色するという事が可能になっている。

例えば早稲田大学の教授、石川氏、飯塚氏、エドガー氏らのグループが、ディープラーニング技術を用いてモノクロ写真に自然な着色する手法を確立した事を発表した。この手法は一般にも公開されている。その方法を用いて、モノクロから着色を施したものが上記右の写真。

このように自然な着色によって、カラー写真と見紛うほど。以前のモノクロ写真をカラー写真として見てみたいという願望を叶えてくれる時代になっている。両親や祖父母などが生きた時代の記録写真をカラー写真として蘇らせることが出来る。きっと良きプレゼントなどにもなるのではないだろうか。

巨匠アンセル・アダムスと風景写真。

モノクロームは明らかに濃淡での表現が重要である。陰影は写真という表現において何分とても重要な要素。それはカラーにおいても同様の事。彼の写真集を見ていると、その素晴らしい写真の数々に魅了されるはずである。特に彼の撮影したヨセミテの写真は有名であり、写真表現の古典として何時までも偉大な価値を残し続けるものであるに違いない。

もちろん風景写真の大家であり、適正露出の算出法としてのゾーンシステムを考案した人物としても知られる。もっとも我々日本人にとっても重要な人物。大戦中、アメリカ移民の日系人たちの収容所を撮影し、自由と平等の国でありながらにして、自由も平等も謳歌できない人々の存在を嘆き、またアメリカの政策を表立って批判した人物の一人であったりする。

何よりアメリカを愛していたパトリオットである。写真においては、カラー表現の第一人者でもあるエリオット・ポーター氏も初めてアンセル・アダムス氏のモノクロームで撮られた自然風景写真を目にしたとき、脱帽せざるを得なかったという。そして今、そうした写真を目に触れることが出来る幸運に包まれ、是非ともモノクロという大海原へ帆を張り、かいを漕ぎ出すべきである。

それはまさに表現としてのモノクロという選択肢を掴みとり、写真表現全体の質を上げる行為ともいうべきもの。デジタルで簡単にその表現を手にすることが出来る今、モノクロームという広き深き世界へ足を踏み出してみるのも良い。


このコラムの筆者
ZINEえぬたな

"古典は常に新しき火種"
をモットーとして、残すべき「価値」を次世代へ継承。

個人で編集するZINEをウェブ上で運営。「えぬたな」は一つ一つの記事を読み切りとして編集。自らの写真と文章で、ヒトの思いを伝え、世の中の良いモノ、残すべきコトを紹介。

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