人生を彩る。Minolta TC-1、CONTAX T3、TVS2の魅力を特集。

高級コンパクトフィルムカメラは、1980年代から1990年代を軸として、フィルムカメラが各メーカーにとっての主力を担っていた全盛期の時代を彷彿とさせる。日本が高度経済成長とその後の未曽有みぞうのバブルを経て、その経済が失速する。そんな激動の時代をまたにかけた製品プロダクトたちである。カメラメーカーはこぞって、その豊富な資金力を元手に、贅沢なコンパクトフィルムカメラの開発を手掛けた。

それらは総じて高品位な外装と高性能なレンズを搭載。消費者たちもそんな夢のようなカメラを、手にすることのできるふところを備えた時代であった。そして現代、それらは再び脚光を浴びている。その素晴らしい品質クオリティは、まさに今でも通用する一級品たちなのである。

互いを補完し合う、高級コンパクトフィルム。

高級コンパクトフィルムカメラは、それぞれに魅力が備わっている。しかも絵作りの色合いニュアンス、適した画角など、メーカーや製品によって仕様や使用感に少なからず異なる点が存在する。それはカメラ達が本質的に持ち合わせた自我アイデンティティなのである。彼らの個性を考えながら、撮影者の姿勢に合わせたカメラを相棒として迎えるのも良い。

更には、それぞれの長所を存分に発揮させ、一眼レフカメラの交換レンズのように、数台を持ち歩くというのも一興。そうすることで小さな体躯を存分に活かしつつ、システム全体の軽量化と小型化が図れる。一眼レフに比類、いやそれ以上の表現力を各自備えた屈強な奴ら。それはまるで、極北の大地を走る犬ぞりのように、互いを補い合いながら、撮影者を手厚くサポートしてくれるものである。

TC-1、T3、TVS2は、それぞれに豊かな個性が備わる。

カメラMinolta TC-1CONTAX T3CONTAX TVSⅡ
外観
内部表示
発売年1996年2001年1997年
レンズ28mm F3.535mm F2.828-56mm F3.5-6.5
大きさ99x59x29.5mm105x63x30.5mm123x67x45.5mm
質量185g230g375g
電池
CR123ACR2CR123A

このように素晴らしいカメラであるから、一台に絞って愛機として常に傍らに置くのも良い。それでも必ずや撮影者の意図と期待に応えてくれる存在が、高級コンパクトフィルムカメラ。常に大役を見事にこなすことのできる逸品の数々。同時に数ある選択肢の中から、上記のようなカメラを複数台持つ事で、その可能性は幾重にも広がっていく。画角や表現の違いを活かし、被写体の魅力を最大限に伝えようとする試みは、最高に面白い。

Minolta TC-1の特徴と魅力

TC-1。その存在は小型を極め、まるで忍者のように周囲に溶け込む。それでいながら性能は圧巻。レンズはミノルタ渾身のGロッコール28mm単焦点、F3.5の完全円形絞り。すべての絞りで美しい真円形のボケを実現した。その凄みある描写力も特筆すべきもの。

全自動制御で、UIユーザーインターフェイスも考え抜かれた設計。絞り優先AE機種でありながら、露出固定AEロックも可能で、撮影者の表現の幅も大きく広がる。その甲斐もあって多くのプロカメラマンに愛された製品である。

Minolta TC-1の作例

─ 王道を極める。写真機の中の写真機。

CONTAX T3の特徴と魅力

非常に小型な体躯から放たれる誰しもが魅了される色彩美。コンタックスT3は、35mm F2.8単焦点レンズの明るく、素晴らしい解像力は勿論の事。それに組み合わさるCarlZeissカールツァイス特有のコントラストの魔術によって織りなされる彩り。その超越した表現力には脱帽するしかない。

その為、こちらも多くのプロ写真家に愛用された。また全自動制御のお気軽さを備え、プログラムオートによる露出も安定。ノーファインダーでの速写的スナップにも向いている。絞り優先AEも可能。

CONTAX T3の作例

─ その色彩に、惚れる。とりこになる。

CONTAX TVSⅡの特徴と魅力

コンタックスTシリーズの陰に隠れた存在。TVSシリーズは各社が競って手掛けた高級コンパクトフィルムの中にあって異色。なぜならズームレンズを搭載した希少な存在だからである。このカメラがより利便性を追求したからと言って、その描写性は決して侮れない。Carl Zeissカールツァイス社製のVario Sonnarバリオゾナーは、高解像と高コントラストの高水準の均衡バランスを追求

人間の視野感覚に近い28-56mmという画角を備えていることで、よりその場の印象をより的確に切り取ることが可能。これ一台を旅行などに持ち出せば、殆どすべての状況を美しい写真として残すことが出来る。

CONTAX TVSⅡの作例

─ をもっと、面白くする。

フィルム最高画質、圧倒的描写力をこの手に。

技術の発展を遂げたデジタル写真。スマートフォンでも美しい写真が撮れる時代になった昨今。世間の一般的な価値として、コンパクトカメラやデジタル一眼といったカメラの役割は、現在進行形で逓減ていげんしているのではないだろうか。しかし、現物としての価値を実際に手にすることのできるフィルム。それから第一線級の表現性は、そんな今だからこそ必要とされる価値観である。

高級コンパクトフィルムカメラは、フィルム元来の高い表現性を手のひらに収めることが出来る。デジタルならスマートフォンでも良いとしても、フィルムなら今もなおカメラを用いなければならない。そしてスマートフォン同様に持ち運び、圧倒的な描写力で記念写真や記録写真を撮ることが出来るのは、至福の喜びである。現像され出てくる写真。そこにはやはり、カメラの持つ大切な価値が備わっている。特にMinoltaミノルタ TC-1CONTAXコンタックス T3TVS2のような全自動オートマチックカメラなら、フィルムの扱いに慣れていなくとも失敗がなく、信頼性が抜群に高い。

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特集した、高級コンパクトフィルムの魅力や使い方をより詳しく掲載。そんな「カメラを片手に旅をする。」発見と出会いが、少しずつ心の豊かさを取り戻していく。

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