キヤノンのノーマル単焦点レンズであるEF28mm F1.8 USMは、その口角の画角と開放値の明るさが魅力的。1995年に誕生して以来、そのコストパフォーマンスの高さから多くの支持を集め、生産終了に至る20年以上に渡ってロングセラーを続けてきた。単焦点レンズとしては手にしやすい価格帯であったことや、フルサイズ機のみならずAPS-Cユーザーとしてもキヤノン換算で45mm相当と標準域で用いることが出来るというのも支持されてきた理由。
またEFレンズとしてUSM駆動のオートフォーカスを備えており、AFモードのままでもマニュアル操作が可能なフルタイムマニュアル仕様のレンズとして使い勝手も良好。その描写も自然な写りをしてくれる。本体サイズは小ぶりで手のひらサイズの大きさ。それに質量310gと実に取り扱いやすいレンズに仕上がっている。初心者から熟練者まで、写真を楽しむことのできる単焦点レンズ。まさに長年に渡って支持されてきた理由がそこにある。
ソフトで甘い、絞ればシャープな描写が魅力。EF28mm F1.8 USM。
写りについては、開放値であれば開放らしい甘い描写をしてくれる。現代的で最新レンズが備えた精密なカリカリの描写力というよりは、開放の甘さを楽しんだり、1・2段程度絞って撮影することでシャープな描写になるというようなレンズの基礎を学ぶことができるような代物。であるからこそ、その光学的なクセを利用した撮影方法に応用が効き、それを楽しむことができるレンズである。
個人的にはこのレンズの魅力が分かったのは実に遅く、例えば新型のLレンズなどに触れた後、オールドレンズの魅力などにも触れ、巡り巡ってようやくEF28mm F1.8 USMの魅力をより深く理解出来たように感じる。というのも良くも悪くもオールドレンズといえばオールドレンズに片足を突っ込んでいるような、新型レンズといえば新型に片足を突っ込んでいるような、近からず遠からずの立ち位置にある。
ただし巡り巡ってじっくりと向き合ってみると、誠に奥深い魅力あるレンズである。やはり28mmという画角やf1.8という明るさは、相当に使い勝手が良い。時に甘く、時に鋭く。メリハリの効いた撮影が簡単にできるという意味においても優れたレンズであり、取り回しが効く小型で軽量な佇まいも好印象。そうすると、敢えてこのレンズを持ち出す機会も自ずと増えてくるところである。
EF28mm f1.8 USMはノーマル単焦点レンズとしては定番のモデルとして長年愛されて来た。それでもその評価は二分するところ。このレンズの魅力を理解するにも、それ相応の経験や技術が必要になる部分もあるに違いない。それは個人的な経験からも感じられる事象で、このレンズの光学的なクセを魅力であると理解するには少し時間が必要にも思えてくる。
それもキヤノンにLレンズというブランドが存在していればこそ尚更。時に赤鉢巻をしていないシンプルな外観のノーマルレンズにも目を向けると、その優れたプロダクトの数々に魅了される。決して開発がなおざりにされた訳ではない秀逸なレンズの数々が散見される。このようなレンズたちも長く愛用に耐え、かえってLレンズにはない携帯性の良さや気軽さなどを備えた、実用的な道具であることが伺える。
室内ポートレート撮影も難なくこなす。明るく寄れる広角単焦点。
EF28mm F1.8 USMを用いたポートレート撮影などでは、開放での描写が甘く麗しい。そのボケ味は柔らかく、周辺部の解像感は低く、収差や減光の影響を受ける。しかしながら中央部は比較的解像感が得られる。そうであるからこそ、かえってその個性が写りの面白みを生み出し、興味深くしている。勿論、その開放値F1.8の明るさは、三脚なしでも暗がりや夜間帯の撮影などでその実力を如何なく発揮してくれる。
広角単焦点であるから、ボケ感は標準レンズと比べれば相対的に減じるように思われるが、それも撮り方次第。その被写体に近づいて撮影すればするほど、遠景の背景は当然ながらよりボケる。その際にも最短撮影距離0.25m、最大撮影倍率0.18倍というスペックがものを言い、しっかりと寄った撮影が可能。またF2.8やF4程度にまで絞れば比較的シャープな写りが期待できるというのもミソ。
広角単焦点といっても、28mmと広角すぎないというのも利点。建物の中を撮影するとか、街角を撮影するという場合においても、状況を説明したり、被写体を明確にしたり、適宜その場その場の状況に応じて写真を意図することができる。この絶妙な画角は非常に使い勝手が良く、この画角界隈にはオールドニッコールの名玉とも評されるAI Nikkor 28mm f/2.8Sなども存在していたりする。
手持ち撮影のお手軽さに繋がる小型軽量性と暗がりでも撮影できるという明るさ、それに広角レンズであるからこそ、手ブレの影響が少ない性質を備えている。その表現力も多彩で、慣れれば実に使い易いレンズ。生産終了後の中古価格も落ち着いており、残る個体数も多い為、手に入れやすい。早いAF性能を備えた明るい単焦点レンズ。その魅力は今も健在であること間違いなし。
レンズ構成は9群10枚と同じ画角の物と比べれば比較的複雑な構成。F1.8という明るさの大口径レンズながら小型軽量化されている点が実に秀逸。スナップから風景写真にとっても使い勝手が非常に良い。威圧感を周囲に感じさせることも無く、撮影に集中できるというのも大きな利点。更に比較的寄れる広角レンズであるという事も嬉しく、テーブルフォトなどを含めて多くの場面で活躍する。
シャッターチャンス増加。お気軽なお散歩、小型軽量の利点。
このレンズには大口径化に対応したレプリカ非球面レンズが採用されており、低コスト化と小型化や軽量化が志向されている。レプリカ非球面レンズとは、非球面形状金型と紫外線硬化樹脂を使用し、球面ガラス上に非球面を形成する方式により製造されており、その設計自由度が高いものとされている。これらの技術により、非常にバランスの良いレンズに仕上がっている。
Lレンズのように堅牢性や描写力に勝る高性能レンズも、勿論のこと重宝されるレンズである。ただしノーマルレンズには、小型軽量化が実現され、赤鉢巻が無い仕様であることによる周囲に対する威圧感の無さも使い勝手を高めてくれる。そうするとカメラを取り出すことに遠慮も少ない。散歩や旅行などで長時間撮影する場合にでも、軽いレンズと本体であるというだけで、疲労感が少ない。疲労感が少なくなるということはシャッターチャンスも増えるということに繋がる次第である。
このようにLレンズにもノーマルレンズにも、各々に異なる特徴と利点が存在し、いずれにも特有の存在意義が感じられる。EF28mm f1.8 USMは、筐体も金属製で剛性感がありながら、とても扱いやすいレンズ。それが故に、撮影に際しては高揚感を高めてくれながら、共に歩けば歩く程に段々と可愛らしい見た目やフォルムにも愛着が増していく。室内でのポートレートなどでも活躍することを鑑みれば、思い出レンズとしての価値は十二分。
鞄への収まりも良いことから、本体と合わせてもいつでも持ち歩き易い。そのような事実は、大切な人と有意義な時間を過ごした証を、より多く残していくことに繋がっていく。旅行写真や家族写真。何気ない瞬間を残す記録写真。そうして数多く唯一無二の価値ある写真を手にすることが出来るというのが、キヤノンのノーマル単焦点レンズの優れて魅力的な部分であるように思えてくる。
Canon EF28mm F1.8 USMの作例
キヤノン EF28mm F1.8 USMの主な仕様
発売年月 | 1995年9月 |
販売停止 | 2019年頃 |
小売希望価格 | 70,000円 |
レンズ構成(群) | 9群 |
レンズ構成(枚) | 10枚 |
絞り羽根 | 7枚 |
最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 0.25m |
最大撮影倍率 | 0.18倍 |
フィルター径 | 58mm |
質量 | 310g |
最大径×長さ | 73.6×55.6mm |