リーバイスのSTFとは、アンウォッシュタイプの生デニム。ウォッシュ加工を経ていない為、糊の付いたままの状態で販売されている。いわゆるリジットを身体にフィットさせ、自分だけの逸品を生み出すことの出来る製品。そのままの状態で穿いて経年変化を楽しむのも良し、洗いと乾きと穿きを繰り返し経て己の身体に馴染みゆくのを楽しむのも良し。そこから、そのデニムのすべてを自分色に染め上げる事が出来るという点で、至高のシリーズ。
育て上げていくという意味でも楽しみな製品であるが、コスト面から見ても安価でありながら愛着がやたらと深まりゆく。身体に馴染んでいく生地感の様は、ただただ気持ちが良い。リーバイスの説明によれば、リジッドのデニムを穿いたまま風呂に浸かり、穿いたまま乾燥させる事で最高のフィット感が手に入るという。とはいえ、それを実行するには中々に敷居が高い。洗い、乾かし、穿く。ただそれだけでも十分にSTF元来の楽しみに浸ることが出来る。
生デニムの501STF、サイズ感変化とファーストウォッシュレビュー。
ファーストウォッシュにて、糊を落として乾かす。またそれを穿いていく事によってそのフィット感は至高のものとなる。リーバイス公式には、穿いたままお風呂に入り、穿いたまま乾かす。とか、リジッドのまま穿き込む。という何ともデニム愛の詰まった荒業を紹介しているが、ここまでするかどうかは好みの問題。そうした方法によって、経年変化の形にも多少違いが見られるという。ここでは、大方のスタンダードとなっている「漬け置き洗い、すすぎ、洗濯機水洗い、自然乾燥」という流れを紹介したい。
ところでリジットという状態は、一般的にいわゆる生デニムで一度も洗い工程を経ていない状態である。リーバイスでは、このリジットの状態から洗いを経る事で縮んでしまうデニムの特性を活かして、各自の身体に限りなくフィットさせる事が出来る真っ新な状態のデニムとしてシュリンクトゥフィットと呼称している。一から育てるという愛着は勿論の事、各々に馴染んでくれたデニムは、その思い入れも一入というところである。
リーバイスのリジッド、シュリンクトゥフィット。サイズ選びと縮み変化。
購入直後はパリッとしていて、糊がしっかりと付いている。ここからそのまま穿くというのも良いが、ゴワツキも中々のもの。やはり無難に行くと、多少洗いをかけて糊と染料を多少落としておきたいところ。ここからファーストウォッシュを経ると、サイズ感の変化も著しい。丈はツーサイズ、腰周りはワンサイズ程度からあまり変わらないくらいに変化する。であるから、Wは通常のサイズ感、Lはツーサイズ上のサイズを購入すると比較的に丁度良い。
表記サイズ インチ (W)(L) | 腰周り(W) サイズ変化 縮みインチ | 股下(L) サイズ変化 縮みインチ |
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W27~W36 (69~92cm) | 1 (2.5cm) | – |
W38~W48 (W96~122cm) | 2 (5cm) | – |
W50 (W127cm以上) | 3 (7.6cm) | – |
L26~L34 (L68~86cm) | – | 3 (7.6cm) |
L35 (L91cm以上) | – | 4 (10.16cm) |
念のために公式で謳われている変化幅を記しておきたい。基本的には上記の通りのサイズ変化があり、普段履いている服から鑑みてインチ計算しながら購入する必要がある。リーバイスは1インチ刻みのサイズもあれば、2インチ刻みのサイズもある。その為、W29L32やW30L32程度の501を普段から履いている自分からすれば、W30L34を選べば丁度良いという事になる。実際の着用感もそれに準じている為、この計算で購入すれば問題ない。
リジッドデニム(STF)の洗い方、一般的なファーストウォッシュ手順。
リジッドのデニム、SHRINK-TO-FITでは腰に備えられたタグも通常販売されている製品と異なるところがある。この部分は、残しておくとタグ全体の経年劣化を早めるという話もあって、この部分を切り取るか、もしくは残すかという選択肢がある。リジッドのデニムであることを思い出として感じたい場合には、残しておくのも一興。
step 01. タグ右側をステッチに沿って切る。残す。
step 02. 生地を裏返し、40-50℃程度のお湯に浸す。(1時間から一晩など)
step 03. 裏返しのまま洗濯機で水洗い、脱水に掛けて乾燥させる。
乾燥まで終えると、随分とサイズ感に違いが生まれている事に気が付く。リジッドのシルバーデニムと単純にホワイトデニムを重ねる。ホワイトデニム自体のレングスはL30であって、STFのシルバーデニムは購入時の表記サイズL32であった。それにも関わらず、殆どその差が無くなる程に縮んでいる事が分かるところ。購入時には、このような事も考慮に入れておく必要がある。公式にも洗いを経る場合には、ウエストはジャストで、レングスはツーサイズ上を購入することが勧められている。
STFシリーズを購入すると、上記のような説明書きも付いてくる。このようなサイズ感の変化は勿論であるけれど、リジッドをファーストウォッシュした際には染料も中々の量が落ちる。色むら少なく満遍なく色を落とし、そこから自分のスタイルに馴染ませて行きたいところ。この場合、生地を裏返したままつけ置き洗い、洗濯機へ投入する方が良い。
そのまま風呂へ、シュリンクトゥフィットなサイズ合わせも。
ところで手順と言っても様々な方法があり、リジッドを履いたまま入浴してしまうというほう方法も公式には紹介されている。実際に履いたまま気持ちが良い湯船につかると糊が浮いてくる。お湯もインディゴ色が溶け出し、次第に青っぽくなってくる。履いたまま乾かすというのもSHRINK-TO-FITの醍醐味ともいえるのであろうが、びちゃびちゃのまま外出するというのも中々に勇気が要る。
履いたまま入浴して糊を落とす。そうして乾かすと膝裏には身体に合わせてしっかりとシワが付いている。また腰周りが密着しながらも濃密なデニムが動きに追従する贅沢。これが段々と色落ちしてハチノスになるのかは別としても、己だけのサイズ感が得られる。こうなってしまえば関節の動きに合わせたシワが刻まれ、完璧なサイジングが施された世界に唯一のフルオーダーなカジュアルウェアが、ここに誕生したのだといっても過言ではない。
STFでノンウォッシュデニムを履いたまま入浴するスタイルでは、ファーストウォッシュを終えた直後から動き易さ抜群。このままもっと育てて行けば、どんどんと至高の履き心地へと進化していく。その思い入れのある愛着も一入。育てる楽しさも得られるSTFは、一本だけでもワードローブに加えたい。
自分のためだけに、生デニムから育てる。STFシリーズの魅力。
たとえセルビッチデニムで無くとも、ただデニムを育てるという喜びは何にも代えがたい魅力がある。それがリジッド状態の生デニムから、年月をかけて変化を楽しむという噛みしめるような喜びのある嗜好品。STFシリーズは、まるで盆栽趣味のように奥深く面白みのある製品である。ファーストウォッシュを経た後に穿き込めば、たちまちに身体に馴染みゆくジーンズ。その存在はいつしか掛け替えのない愛着を帯びるものである。
ベルトが要らぬくらいに、フィットした相棒。頑丈で居ながらも、身体の動きに合わせて柔軟である。履き込むだけで、次第に阿吽の呼吸が達成されていく様を感じながら、ただその満足感に浸ることが出来る。味わい深く変化していく様は、己の歩みとも重なる部分。決して高い製品ではないけれど、共に歩む時間こそは、これもまたまるで盆栽趣味のように金銭に換算できぬ程の価値を帯びるものである。
ベルトが不要であると言えるくらいに、ウエストヒップに馴染む形状へと変化していく。ストレッチのように伸びる生地感ではないけれど、同様に気持ちよく履きこなすことが出来る。無骨でありながらも履きこごちが良い。ただそれだけで何だかいつも履いていたくなるように、圧倒的な履き心地の良さが確保される。デニムの経年変化を楽しむに当たって、アタリ、ハチノス、ヒゲなどと色落ちやクセに愛称があったりするが、ただただ長らく使い続けているとモノに魂が宿るような気にもなってくる。
上記のシルバー色である501のカラーデニムの場合、セルビッチデニムのような上質な経年変化を捉えていくことは難しいのかも知れない。ただし少しずつ自分の身体に馴染んでいく様を追っていると、兎に角いつでも穿いていたくなる程に愛着が増していく。何故だか尋常では無いほど、スタイリングが決まってしまうような気がする。安価で希少価値という面から見れば、特段目立った存在では無いけれど、ただ己のために存在するという意味において唯一無二。
501の魅力であるツンと尖ったヒップライン。綺麗なハイウエスト。次第に扱い易くなっていくボタンフライ。くしゃくしゃと適当に折り曲げた裾。それらを余す事なく堪能することが出来る。そして、それらが全て気持ちよく、次第に熟れていくような喜びに包まれていく。そのように考えていくと、生デニムを育てる喜びというのは格別なもののような気がしてくるところである。
Rigid/リジッド、STF/シュリンクトゥフィット、生デニムとは。
ところで、Rigidとは直訳すると「硬い」とか「硬直」という意味になるけれど、デニムの場合も出荷段階で洗い工程を経ておらず、糊がバキバキに付いた状態のことを言う。つまりゴワゴワとしていて、まさに硬い。そして、そんな状態のデニムのことを「生デニム」や「プレミアムロウデニム」と愛着を持って呼称されている。
ただしリジッドの中にも生デニムとは異なって防縮加工が施されているものもあり、STFはそのような加工が施されていないシリーズであると言える。製品名にSTFが付いていないがRigidという表記のある製品は、防縮加工が施されているものもあったりする。ちなみにMADE IN THE USAというシリーズのリジッドでは、しっかりとSTF同様に縮んでくれるため、最高に着心地の良いフィット感を手に入れる事が出来る。
リーバイスにおいてSTF/SHRINK-TO-FITシリーズは、この生デニム自体を製品化して流通させたモデルである。洗い過程を経て、乾燥させて、生地の綿が密集したところで履く。そうすることで、各人の身体に密着して馴染んでいき、次第に唯一無二のジーンズが完成する。このシリーズの特徴でもある、バックスタイルに映える大きなタグ。タグ自体の寿命を考えると、余分な部分を切り取るという選択肢もあるが、こうしてシュリンクトゥフィットであるというアイデンティティを残すというのも良い。