お洒落でありながら、大容量でありながら、使い勝手が良い。そんな夢のようなカメラバッグがあれば、多くの写真愛好家の悩みが軽減されるはずである。thinkTANKphoto社のレトロスペクティブ30は、その理想の道のりを大きく前進させる。細部にまでこだわりが感じられる製品。
機材保護と軽量化という二律背反する命題について、最大公約数をはじき出す。必要十分に大切な機材を守りながら、撮影時の負担を可能な限り軽減するのが、このカバンの魅力である。更にあらゆる現場に溶け込む佇まいは、多くの場所で重宝するショルダーバッグだ。
山歩き、街歩き、様々な場面で用いることが出来る優秀さが故、撮影行ではいつも携行品の選択肢に入る。そんなときヘビーローテーションにも耐えうる頑強なつくりは嬉しいところである。
ショルダーバッグは即写性抜群! レトロスペクティブの真骨頂。
写真の楽しみには、その一瞬の「出会い」をどのように切り取れるかというものもある。それは各人のものの見方、世界観を露出している事になるのだけれど、その喜びや感動を他者と共有できる高揚感は何物にも代え難い。
切り取る際にはカメラという道具が必要なのであって、いかに素早くその準備が出来るかというのもバッグ選びの条件になるのではないだろうか。開閉や取り出しに手間が掛からないという事だけでも、「出会い」をものにできるチャンスを増やす事になる。そしてその出会いは、一瞬の出来事でありながら、また一期一会のもの。一つ一つが一生の宝物になるのだから最高だ。
外観、周囲によく馴染む。
レトロスペクティブ30は、ベルクロ方式を採用している事で、開閉が圧倒的に容易に素早く行える。また開口部が広いことで、手を入れやすく物を取り出しやすい。ショルダータイプのバッグである点も、一瞬のチャンスを捉えんが為には好都合である。
大きさは外寸、横幅40.6cm x 全高26.7cm x 奥行き17.8cm。重量は約1.5 kg。単純にスペックで見ると比較的大きい部類である。色柄はパインストーン。他にもブラックとブルースレートがある。外観はとてもおしゃれでカジュアル。
レトロスペクティブというバッグは、アウトドアであろうが街であろうが、帆布は色んな服装にも合うし、更に周囲の風景にも素晴らしく溶け込む。そもそもthinkTANKphoto社としてもコンセプトが、そういうものなのだから当然でもある。
報道・ドキュメンタリーに携わる写真家のために開発された「目立たないカメラバッグ」としてのレトロスペクティブ・シリーズ。 -thinkTANKphoto社公式HPより
質感、手にもよく馴染む。
驚くのはその質感の良好さ。帆布の生地感はカメラバッグとして有名なDOMKE(ドンケ)と同等、いやそれ以上に感じるほど。これは画像だけでは完璧に理解するのは難しい部分ではあるけれど、とても素晴らしい質感。
これだけの製品を作ることが出来るthinkTANKphoto社にもとても好感が持てる。機能面としては、その大容量具合が特に驚きである。更に質実剛健な製品で作りに妥協がない。それが所有する喜び、そして使用する喜びにつながっている。
レトロスペクティブ30の収納性は抜群。使い方と特徴。
実際にレンズや本体を収納してみると、本体+レンズが2セット。更に100-400クラスの望遠レンズまで一息に飲み込んでしまう。
しかも100-400mmレンズを本体にセットしていたとしても蓋は余裕がありながら、完全に閉まる。ここは大きなポイントだ。急な移動や付け替えの時間がない場合に、比較的大型のレンズを付けたままでも収納可能な利便性は計り知れない。
収納された機材は上記の通り。これだけの収納力があれば、多くの状況に対応することが出来る。旅行などともなれば、その実力を如何なく発揮してくれるであろう事間違いない。
それにクッション材のフワフワ感は無いが、その堅牢さに驚いた。だから機材の安心感、安定感、安全性はしっかりと担保されているように感じる。
ただし重くなり過ぎないように内容物に関しては、ある程度の気は使わなければならないのは当然の事。目的に応じて機材は考えていきたいところである。しかし大は小を兼ねる。考え得る状況に確実に対応できるシステムを構築する事だってできる。
多様なポケットが充実。使い勝手に配慮された収納。
正面の二つのポケットはカメラ本体も収納可能なほど大容量。コンパクトカメラくらい何のその。現在は予備バッテリー4つ、大量のフィルム、フィルターなど頻繁に取り出す必要のあるものを収納している。
内側の正面側、小物ポケットは充実。パスポートからメモ帳、ペン類も難なく入る。
内側の背面側ポケットにはファスナ付きの雑誌が入るポケット。その使い勝手と細かな配慮には脱帽する。
背部のポケットにも雑誌が入る。しかもこちらもファスナ付き。
開閉部に施されたサイレンサー。ショルダークッションの厚みに好感。
ところで全体の見た目はファッション性があってオシャレ。ぱっと見は無地でカメラバックっぽくはないし、普段使いでも全くと言って良い程違和感がない。
開閉はベルクロを使用するけれど、サイレンサーも完備されていてビリビリ音も回避することが出来る。必要最小限の活用もユーザーの裁量次第で調整が可能。名刺が入るネームタグも完備されている。
肩パットは滑り止めが施されていて、分厚い。肩紐も4cmと太い為、とても背負いやすく、更に肩への負担はとても軽減している事を実感する。全体を通して、このレトロスペクティブは隅々まで考え尽くされた製品である。
防水レインカバーも付属、突然の雨でも安心。
旅行では雨の存在がとてもシビアな問題となる。このバッグには既にレインカバーが内蔵されている事もポイントは大きい。突然の風雨にもすぐ対応できる。そうした対応力が必要になるのは旅行だけでなく、登山などのアウトドアシーンにも共通する部分。
また収納力の大きさは、行動パターンの多様性にもつながってくる。普通ならば軽登山にはバックパックだという意見が多いだろう。それでもバックパック並みの収納力を持つショルダーバッグはその考え方に一石を投じる事にもなるのではないだろうか。
レインウェアの収納が容易に出来ることも大きなアドバンテージである。併用すれば旅先で急に雨に降られても物怖じする必要もなく安心感がある。
内部ボトルホルダーに軽量レインウェアを収納すると良い。世界最軽量ゴアテックスレインウェアでもあるトレントフライヤージャケットを収納している。
レビュー:レトロスペクティブだけで必要十分。普段使い可。
レトロスペクティブ30は、タウンユースにもアウトドアシーンにも耐えうる高性能バックである。街歩き、軽登山(ハイキング)、旅行を目的として使用するならば、きっと頼もしい味方になってくれる。写真行がますます楽しみになる製品なのである。
カメラバッグはとても重要で、あれやこれやと詰め込めるバッグが必要な時もあれば、街で使える控えめさが必要になったり、山に持って行く際には安全に軽量に持って行く方法が必要だったりする。
書けば書くほどキリがないほどに多様なスタイルが必要になってくる。だから最初から多様な用途を完璧にこなす製品は無いに等しい。それでも撮影のシステムにはカメラバッグの存在が絶対的に必要であって、考えないということも不可避な問題。
そんな課題に直面したとき、おしゃれで機能的。場所を選ばず使いやすいレトロスペクティブ30は、 多くの使用法でその需要を満たしてくれる。
上記は商品の海を探検する際、考慮した事。であるが、それに当てはまったのがthinkTANKphoto(シンクタンクフォト)社のレトロスペクティブ30という訳であった。
ベルクロ開閉は最高。歓迎すべきメリットだった。
正直に言えば、このバックの特徴ともなっているベルクロを用いたメインの開閉部に関して購入前には不安感があった。しかし長らく使用してみると、そのベルクロであることが明らかに利点であって、むしろカメラバッグという性質上、歓迎すべきものであったことに気が付くのである。
例えばカメラや備品の転落の心配があったが、そうした心配が現実になった事は一度もない。更にその安定性はいつどんなときにも確保されている。いやこのバックであったからこそ安全に持ち運べるというもの。
ショルダーバッグを背負いながら前かがみになろうとすると、前滑りする事がある。ただこの製品ではその心配はほとんどない。しかも寧ろベルクロという性質上、意図せずとも自然と蓋が必ずきちんと閉じているのである。その安心感は保険にすらなっている。
独力でレンズ交換をしようとする際には、ショルダーであることがその実力を遺憾なく発揮し、とてもスムーズに片手でも目的を達することが出来る。またベルクロ方式が採用されていることにより、その開閉に手間がかからないため、流動的に被写体をスナップすることが可能となる。
被写体との偶然の出会い。それは時間という制約の中に必ず落とし込められているが、このレトロスペクティブを使用していながら、これらのチャンスを逃すことは本当に少ない。むしろこのバッグで逃すシーンなら諦めもつくというもの。それほど信頼性が高い。
少し苦手とする部分。重さを改良したバージョンアップ製品。
基本的に収納力は、少なくとも大きさという部分で補っている所もある。しかし実際にレトロスペクティブを背負ってみると、そこはほとんど気にならない。いやむしろまだ大きくても良いくらいに見えてくるのだから不思議なもの。
質感の良さも相まって、何処へ行くにも連れて行きたくなるバッグ。また次に出かけるのも楽しみになる。
実はレトロスペクティブ30のバージョンアップがあり、v2.0という製品もある。そのバージョンアップでは軽量化が図られている。質感の低下が感じられるとの情報もあるが、より改良された製品も魅力的である。
コラム:レトロスペクティブ30で、ただ自然体のまま写す。
写真は発見と感動の水先案内人。
日々の喧騒の中に身を浸していると、足元の変化にすら盲目になる。殻に閉じこもる貝のように暗闇の中で過ごすのだ。しかし真実、貝は光に照らされている。外の広さや美しさが世界の本質である。
雄大な自然の中に身を浸すと清々しく、精神が開放されていくのが分かるというものである。実は日常を離れずとも自然は常に身の回りに存在している。近所の神社の御神木。街路樹。草花の様子や鳥のさえずり。そうした他の存在を意識すると、その変化にも気が付く。
その際に写真は、先導者となって発見へと導いてくれる。今という一瞬は常に変化の只中にありながら常に儚いもの。そして、その美しさに気付かせてくれる。気づき一つ一つが豊かな精神を育み、更に人生に資するものである。
実際にはカメラを持たずとも良い。写真を意識するだけで、常に移ろい行く身近な変化に感動するのである。その小さな自然はきっと、大自然と同様に宇宙的節理の中で”あるがまま”に生きている。
時に誰しも、季節や天候の移ろいに一喜一憂する。しかし自然というものはそもそも「自ずから然る(なるようになる)」ものであって、それに抗って生きたとしても、雄大な自然の前には到底かなうものではない。勿論、日々の人間生活ではそれを忘れてしまうもの。
それでも写真を意識してみると不思議と森羅万象に肯定的な見方ができる。雨は雨の日の、晴れは晴れの日の、曇りは曇りの日の。…兎に角、全てに美しさが宿る事に気が付くのである。
ときに我々は災害といって自然を忌み嫌う。一度、地震、噴火、洪水、津波、台風などなどに見舞われると少しでもそれを恨みそうになるものである。しかし、その山、川、海によって日々多くの恩恵に授かり、生かされている。特に山林に覆われた日本の風土は、圧倒的な恵みの上に成立しているのだ。
美しい山、美しい川、美しい海があるということは、裏を返せば相応の災害があって然り。自然は常に恵みと災いとで成り立つ。いやむしろその摂理に従うだけの事。我々が表や裏といって区別していても、自然は常にあるがままである。
自然の中では、ただ心象に正直にカメラを構えシャッターを切る。動作に違和感のない、自然なカメラバッグを背負い。ただ自然体のままで写す。
自然に馴染むレトロスペクティブの写真集
この鞄を背負うと足取りは軽く、何処へでも出かけたくなる。多くの機材などと同様、予定まで詰め込めてしまうカメラバッグなのである。
ブログ:バッグ沼は底なし沼。
写真に興味が出てくると、その道具にも同様に愛着が湧きだしてくる。同時に道具としての使い勝手などにも非常にこだわりが出てくるものではないだろうか。そうした深みに入り込んでいくと益々ずぶずぶと足を抜け出せなくなってしまう。
沼とはそういうものなのである。
正直、カメラ沼やレンズ沼はそこまで気にする事は無い。単純に表現法が広がっていくだけの事なのだから。しかし事、バッグに関しては、底なし沼に近い様相を呈している。
というのもカメラやレンズは全く使わないようなものは殆どないし、目的に応じて使い分けられているとも思える。ただしバックに関しては、用途の違いはもちろんあるとはいえ、ほんの些細な使い勝手を不満に感じてしまうものである。
しかもその沼は、直接的に写真の性質には影響しないのだから、事は重大なような気もしてくる。
目的達成のための手段、道具選びについて、主客転倒してしまう可能性すらある。そこに拘り過ぎず、最初から良いものを選択できるなら、もっと写真に注力できる余地が生まれるというもの。
だからこそ出来るだけ広範囲の使用法をカバーしながら、それぞれの用途で不満点を可能な限り排除した鞄である必要が出てくる。そのようなものがあれば、少ない数のカメラバッグで済むのではないだろうか。
ここまで話をしておきながら、元も子もない話ではあるが、個々人の要請する目的に完全に応じたカメラバッグは無いと言って過言ではない。だからこそどの条件を取捨選択していくかが、選択のカギになるのである。
そして様々な用途を広範囲にカバーできる理想的なカメラバッグ。それがレトロスペクティブ30なのである。
収納力を更に活かすバッテリーホルダーが最高。
予備バッテリーを運用すると、バッグの中が乱雑になる。そこで、thinkTANKphotoのDSLRバッテリーホルダー2を利用すると撮影効率も向上する。これによりレトロスペクティブ30がより使いやすくなること必定。収納内の収納で大活躍する。
同じ製品で4つ収納型のバッテリーホルダーも用意されているのだけれど、2つ収納型を2つ購入し運用するのも収納しやすい。