M42マウントの定番、PENTAX Super Takumar 55mm F1.8。アトムなオールドレンズレビュー。

M42/オールドレンズ

オールドレンズで遊ばんという時、特にM42マウントであるPENTAXペンタックス社のスーパータクマー55mm/f1.8は著明なる製品である。アトム原子レンズという俗称もある通り、酸化トリウムという放射性物質を用いてレンズの光学性能を高めているというポイントがある。その為優れた描写力を備えているという事は説明するまでもないところである。その放射線量に関しては、特段に健康被害として問題にならない程度であり、また皮膚を透過できないα線。だが、その性能と引き換えにした黒魔術的な要素を感じるところでもある。

この酸化トリウムは、血管造影剤として医療にも用いられた時代があったり、1970年代辺りでは当レンズのように光学性能を引き上げる為にコーティング剤として塗布された製品が製造販売されていた時代がある。この場合には内部被曝は問題となっても、外部被曝に関して心配無用であるようだ。近年にあっては、こうして一般的な医療品や工業製品に用いられるような例は無くなっているが、このような歴史的事実も記憶されるべきところであるように思える。

旭光学スーパータクマー55mm/f1.8の黒魔術な写り。

信頼感高く、異常な高コスパ。スーパータクマー55mm。

このペンタックスのスーパータクマー55mm/F1.8は、オールドレンズを代表するレンズ。M42マウントを搭載、汎用性の高さも嬉しい所である。見た目の良さ、手触りの良さ、そして写りの良さを備える名玉であることは間違いない。さらに光源を含めた時の印象深い表現は、多くの写真愛好家が魅了される存在である。フィルム撮影は勿論の事、現代の最新カメラとアダプターを介して組み合わせた撮影は気楽ながら、写真を撮るという行為そのものを楽しいものに昇華してくれる。

描写が鋭く、ゴーストで遊べるレンズ。

このレンズはフードなどを装着して遊ぶというのも良いが、それを装着せずに特色あるゴーストの出やすさを利用して遊ぶというのも面白い。近年のコーティング技術にあっては、ゴーストやフレアが多く低減している優れた製品も多い。しかしこのスーパータクマー55mm/f1.8ならば、より開放値に近い絞りで、強い光源を前にすると容易に虹色のゴーストやフレアが出現してくれる。これらを淘汰すべく、多くの技術革新が行われてきたが、却ってこれを表現として利用するという使い方も好いものである。

小ぶりで操作しやすい、スーパータクマー55mm/f1.8

持ちやすく、操作しやすいスーパータクマー55mm/f1.4。軽くて持ち歩く際にも疲労感に繋がらず、長時間の撮影行を可能にしてくれる。ピントリングの形状もダイヤルしやすいように大きめの凹凸が筐体に仕込まれている。また高級感もあり、手にしているときの操作する楽しさと喜びは一入である。それがまた優れた描写性能を備えていればこそ、優れたレンズであるという印象を誰もが持つもってしまうような逸品である。

F8まで絞り込み、美しい景色を撮影。

F値を一段、二段と絞り込むと中々に切れ味鋭い描写力を備えている。中古市場での価格帯を考えると、相当に費用対効果が高い品物である。F8まで絞って撮影すると、中々にシャープな写りを実現する。ちなみに上記の写真はミラーレス一眼カメラであるEOS R5で撮影したものであるが、軽量でお気軽な撮影が心地よい。清々しい秋の風に浸りながら、その気持ちもなんだか爽快なものであった。55mmという画角が、主役を明確にしながらも脇役を適宜配置する事が出来る。肉眼で見たその景色の美しさを切り取る道具として秀逸だ。

MFレンズを、最新のカメラに装着。

しかもミラーレス一眼であれば、例えばピーキングという機能を備えたカメラを用いていると、非常にピント合わせが安楽になる。軽量化という点から鑑みても、非常に相性が良い装備であるといえる。新型のカメラにMFレンズを合わせる事で、オールドレンズならではの表現を手にしながらも、現代的な撮影環境を整える事が出来るという訳である。そうすると、ますます愛着がわいてくるというもの。しかもMFで合焦させるという行為自体が、より被写体と向き合っているような感覚へと没頭させてくれる。

開放値f1.8、その明るさも取柄。

軽く持ち歩き易いばかりでなく、筐体の金属特有の上質感も好ましい。ピントリングを操作しているときの高揚感を味わうことが出来るレンズ。オールドレンズは数多くあれど、そんな中でも優れた製品を所有している感覚を得る事が出来る。その写りの良さも相まって極めて信頼感がある製品。しかも現代の市場価格においては、非常にお手頃という高コスパはオールドレンズ入門としては最良の選択肢とも成り得る。

開放値F1.8で、立体感ある表現。

スーパータクマー55mm/f1.8は、日が傾きかけた暗がりの森林においても、その実力を遺憾なく発揮する。ピントの合った部分の輪郭が浮き上がり、立体的な表現が可能。しっとりとした空気感までも映し出してくれるかのような魅力を持ったレンズである。F1.8であるから、このような条件下での撮影はお手の物。ボケ味は柔らかで優しい印象がある。しかも小ぶりな筐体であるから手振れを最小限にして扱うことが出来るというのも利点である。

夜の街歩きにも、最適なスーパータクマー55mm/f1.8。

軽量で持ちやすく、緻密なピント操作もし易い。外観も頑強そうな上質感がありながらも、威圧感を与えない小ぶりな形状。更には絞り開放でF1.8という明るさを備えている。そうした事実を加味すると、旅先で夜の街を練り歩く。そんな際には最高のお供として存在できるオールドレンズ。開放であっても描写力はキレッキレッであるから、小さなバックひとつにカメラに装着したスーパータクマー55mm/f1.8は非常に頼もしいシステムとなる。

風景スナップで、大活躍する。

そうして小ぶりで軽量である事から、その運用は極めて繊細な制御が可能になる。風景写真でも写りの良さに期待して持ち歩きたくなるし、手振れも抑える事が出来る。三脚を持ち歩いていたとしても、負担に感じることの無い筐体は扱いやすさに著しく優れ、セッティング時間なども大幅に削減する事が出来るように思える。開放値1.8という明るさに関しても、多くの照度で活用できる他、ボケ味を活かした表現も楽しむことが出来るという点において、文句なしの性能を備えている。

暗がりでの開放値f1.8。

このスーパータクマー55mmと同様のスペックであるオールドレンズ、ニコン社のAI Nikkor 50mm f/1.4Sと比べてみても、開放値の絞りではよりシャープな写りであるように感じるところである。ただしこの場合においては甘い描写が問題という訳では無く、役割や表現の異なりであると考えるといずれも面白みのあるレンズであるという事が出来る。このレンズはオールドレンズらしからぬ程、秀逸な描写性を保持。所持する事によって満足感が充足する事間違いない。

立体的で、奥行き感のある表現力。

このレンズは、ピントの合った場所や絞った時の描写力は緻密で繊細なシャープさを備えているが、また同時に柔和な表情を備えたボケ味が特徴的。開放のときの表現力は非常に魅惑的な写りをしてくれる。立体的で奥行き感のある表現が得意である他、緻密で在りながら柔らかい。ビンテージレンズの代表格として筆頭に挙げられるだけの存在感がある。

ポートレートにも最適なレンズ。

上記で説明した通り、ピントを合わせると優れて高画質なレンズ。明るいという特性も功を奏して、主役をまるで浮き上がらせるような表現。焦点距離も人間の視界と同じような印象の55mmという標準域であることから、被写体の魅力をド直球ストレートに伝えられる。そうした観点から鑑みても、光源を前にしたりしながらフレアやゴーストを発生させるなど、面白く魅力的な写り。そしてシンプルに日の丸構図で被写体を捉えるなど、安直な写り。これらを総じて高い水準で楽しむことが出来るレンズである。

ペンタックス Super Takumar 55mm F1.8の作例

PENTAX スーパータクマー55mm/f1.8の外観と使い方

高級感のある、小ぶりな筐体。

手に馴染みやすく、持ちやすい。これはとどのつまり、MFのオールドレンズ全般に言える事実であるけれど、特にスーパータクマーは質感が頗る良い。同時に操作しやすいピントリング、それを操作しているときの滑らかな動きは撮影者を高揚させてくれること間違いない。M42マウント界の枠に止まらず、オールドレンズを代表するような存在。根強く支持され続けている名玉であることには、ただの佇まいからも説得力がある。

ピントリングを回す。合焦させる。

ピントリングを回す。

ピントリングを回す。グリスを塗った筐体がぬるぬると動く、精密な金属を操作する気持ち良さを感じる事が出来るようなレンズ。またピントリングには、親指の大きさにも密着するような大きめの凹凸。スリットが刻まれており確実な操作が可能。緻密なピント合わせを実現してくれる。

絞りリングを回し、絞りを変える。

絞りリングを回し、変更する。

絞り値を変更する場合には、より根元にある絞りリングを回す。赤い♦菱形の部分に、絞りの数字を合わせる。分かり易く直感的な操作が可能になっている。カチッカチッとしたクリック感も感じる事が出来る為、ダイヤル操作は心地よく、また分かり易い。

M42マウントをデジタルに装着。オールドレンズ用アダプター。

M42マウントを、EFマウントに装着。

M42マウントは、M42マウント搭載のフィルムカメラに装着するだけでなく、他社のフィルム一眼やデジタル一眼などに装着するというのは、その可能性を十分に活用する事が出来る。現代のカメラ本体にいにしえのレンズを付けて撮影する事が出来るというのは、浪漫ロマンがある。そのような使い方というのは、撮影自体の楽しみを大いに増してくれるというもの。AF機構が用いられていないMFレンズの取り回し易さは、特に街歩きなどにおいては圧倒的で絶大な価値がある。

オールドレンズで、快適な街歩き。

K&F Concept社のアダプターを用いれば、各社のマウントに装着できるようになる。また同様の製品をいくつも使用しているが、品質については特段不満を感じることなく、快適な撮影を可能としてくれる。アダプター自体が金属が用いられており、使用していて安心感もあるところは重要なポイント。キヤノンのRFマウントに装着したい場合には、一旦EFマウントに変換した後に純正アダプターを用いてRFへと変換するほうが無難。

アダプターで過ごす、オールレンズライフ。

キヤノンの場合には、ドロップイン型のPLフィルターやNDフィルターを装着できるものもあり、レンズ一つ一つに合わせたこのようなフィルター類の付け替えが不要になるシステムも構築する事が出来る。当然ながら、これらはオールドレンズを楽しむにあたっても非常に利便性の高い撮影方法となるに違いない。

スーパータクマー55mm/f1.8の放射能、健康被害の有無。

アトムレンズと言われるレンズであるから、実際のところ放射線量を測定すれば、それなりに出ることは間違いない。自然界に存在するバックグラウンド放射線のことを加味すれば、それ以上の放射線量である。ただし酸化トリウムから発生するα線は皮膚表面を透過でき無い。通常肌に密着させた状態を維持させたとしても、皮膚表面で放射線は止まるのである。また使用距離によって影響を受ける放射線量も少なくなることを鑑みれば、通常使用の下、これによって健康被害が起こる心配は無いといって差し支えない。

街歩きが楽しくなる、高コスパなレンズ。

この酸化トリウムという放射性物質が、人体に悪影響を及ぼすのは体内へ摂取した場合にのみ限られる。つまりレンズそのものが破損し、その破片や塵などが体内へ入り込んだ時などという事になる。こうした内部被曝の影響であっても、極々微量のものであれば放射線量も少ない。こうした事実から、光の屈折率を高め、その性能に反映させるために酸化トリウムを用いたレンズは生産されていた。

しかしレンズ生産の際には作業員に負担がかかることは間違いないところ。光学的に優れた性能を確保できるとはいえ、こうしたリスクを避けたり産業廃棄物処理のリスクを低減するため。また新規開発により技術革新し、コーティングの代替方法が確保されたため。次第にアトムレンズが姿を消していったという経緯がある。そうしたことを鑑みれば、スーパータクマー55mm/f1.8という存在は、幻の技術を用いた産業遺産のようなレンズであると言える。

レビュー:圧倒的高コスパ、ハイパフォーマンスなオールドレンズ。

優れたレンズ、ただ片手に持ち歩く。

オールドレンズの入門レンズとして真っ先に名前が挙げられることが多々あるペンタックスのスーパータクマー。特に市場価格を鑑みれば、その経済効率性とパフォーマンスの良さについては圧巻のものがある。日本ではオールドレンズ、海外においてはビンテージレンズとして、昨今注目を集める古の名玉たち。フィルム時代においても、優れたレンズとして、または最新レンズとして当時は用いられてきたもの。結局のところ、表現性や描写性については申し分ないものばかりである。

光源を前に、美しい表現。

かといって、レンズの持つ個性的な性能を愛でる対象とするならば、例えどのようなレンズにおいても価値があるようにさえ思えてくるところである。ハイテクでありながら、優れた描写性や撒き餌レンズのようなコスパを欲するならば、敢えてこのようなオールドレンズを手にする機会や必要は無いようにも思えるところである。

ただし、その表現力やMFレンズ特有のピントリングを合わせる行為そのものを楽しませようという意匠は、やはりカメラを操作する表現者を必ずや高揚させてくれるに違いないのである。中でも、M42マウントの雄であるペンタックス社スーパータクマー55mm/f1.8は圧倒的な存在価値があり、それを所有する喜びも用いる喜びも、いずれも大きいものがある。最初の一本としてこのレンズを手に入れると、きっと底なしのオールドレンズ沼に足を踏み入れてしまうに違いないのである。

ブログ:スーパータクマー55mm/f1.8、関門海峡の夜景を撮る。

門司港より、関門橋を撮る。

九州の炭鉱は戦中戦後の産業を支え、高度経済成長の原動力ともなった。門司港はそんな石炭を輸送するための一大拠点ともなっている。それから平家と源氏における決戦の地ともなった壇ノ浦もある。本州と九州の境目には、数多くの物語が眠っている。決戦といえば、宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の決闘なども有名である。第二次世界大戦においても本土決戦などに備えた下関要塞は、下関と門司にまたがって瀬戸内海に入り込む敵を迎え撃つための要所に設けられた。

幕末にあっても下関戦争といって尊王攘夷派の長州藩と西洋列強のアメリカ・フランス・オランダ・イギリスとの戦争の舞台ともなった。また日清戦争における下関講和条約が調印締結された地である事も、歴史的に大いに知られた事実である。兎にも角にも日本という歴史において、色濃く忘れがたい記憶が残された場所が、この門司港という事になる。歴史を感じる場所であるという意味においても、その歴史的建造物や町並みのレトロ風情は、非常に好ましい雰囲気を保っている。そんな門司港、手持ちで夜の街を散策するというのに、スーパータクマー55mm/f1.8は心強い相棒となった。

K&F Concept
K&F Concept フラッグカメラアクセサリ
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このコラムの筆者
ZINEえぬたな

"古典は常に新しい"をモットーとして、相続されるべき普遍的な「価値」を次世代へ継承。

個人で編集するZINEをブログ上で運営。「えぬたな」は一つ一つの記事を読み切りとして編集。自らの写真と文章で、ヒトの思いを伝え、世の中の良いモノ、残すべきコトを紹介。

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