Patagoniaのクラシック・レトロX・ベストは秋冬で重宝する定番のアイテムだ。巷にフリース素材を用いたベストは数多存在するけれども、このフリースベストは発明企業が作るまた特別なもの。近年のモデルは非常に防風性にも優れ、ただ羽織るだけで段違いの暖かさを手に入れることができる。型崩れもせず、何時だってしっかりとした形状を保ってくれる。
ある時はインナーとして、またある時はアウターとして、そうして多用途に活躍してくれる事間違いない製品である。その機能性を体感すると、いつしか忘れられなくなる存在となる。いつの間にやら人々のクローゼットにおいて、秋冬の鉄板アイテムとして君臨する事となる逸品だ。
パタゴニアのクラシック・レトロX・ベストで、アウトドアな着こなし。
パタゴニアは、1965年に登山家のイヴォン・シュイナード氏が主体となって、航空技師であったトム・フロスト氏と共同で設立されたシュイナード・イクイップメント社が原型となった。自ら使用するためのギアをその手で鋳造するところから始まった事業は、手作りで賄いきれぬほど注文が殺到。そうして金型や機械の導入が必要となった際に設立された会社である。その後シンプル性、軽量性、耐久性、機能性を追求。
1970年までには瞬く間にクライミングギアで米国最大の製造業者となった。しかしそれまで主力として販売していたピトンは岩肌の損傷を進め、環境に負荷が加わるという事実に直面。ピトンから手を引き、環境負荷の少ない抜き差しが可能なチョックという方法へ転換。クリーンクライミングを提唱するに至った。
1970年代になるとクライミングウェアの販売にも進出。ギアとは別にウェア独自ブランドが必要となり、そうして誕生したのがパタゴニアであった。そうしてモルデン・ミルズ社と共同でシンチラフリースを開発、現代においては常識ともなったフリースを生み出した企業である。そんな企業が生み出したド定番フリースウェア。それがクラシック・レトロXなのである。ちなみに、そんな経営哲学は著書になっていたりする。
時代を超越した日常フリース、レトロXの機能美。
レトロXといえば、パタゴニアのカジュアルフリースラインとして、長らく支持され続けるド定番のアイテム。そのクオリティの高さは見る者は勿論、着る者すべてを魅了する。表地には17.9オンスという厚手のフリース素材が用いられており、裏地には3.2オンスの透湿性も高いメッシュ素材、その間に防風性の高いバリアが仕込まれており、快適性に極めて優れているギアなのである。
お洒落であるが、それが我慢で無ければならないという命題に反する素晴らしき製品。アウトドアメーカーが丹精を込めて提案する衣服であればこそ、機能性と快適性の追求が為されている。それにも関わらず見た目にも優れ、健康的な美に溢れている。間違いなく機能美としての佇まいがそこにある。パタゴニアが自ら、作家サン=テグジュペリ氏の名著「人間の土地」によって導かれたというように。
完成は付加すべき何ものもなくなったときではなく、除去すべき何ものもなくなったときに達せられるように思われる。…中略…発明の完成はかくて、発明の忘却とその境を接するのだ。
新潮文庫 サン=テグジュペリ「人間の土地」飛行機 P.69より引用
クラシック・レトロX・ベストの変わらぬ価値。
さて、着回しが柔軟で、汎用性の高いベスト。ヴィンテージなクラシック・レトロX・ベストと現行モデルを比べてみると、この製品もまた時代を経て少しずつ変化を遂げていることが伺える。それはまるで神髄を守るには、漸進的に改革せねばならぬというように。
表記は同じサイズであっても、裏地がしっかりとした素材に強化されており、着丈も腰丈から腰を覆うようなヒップ丈へと変更が加えられている。これは明らかに、インナーであるというよりは、アウターであるというほうに比重を置いた設計変更だ。無論今でもミドルレイヤーとして、中に着込むのも外に羽織るのも良しとする製品。このカジュアルな使い勝手の良さは、常々確保され続けている。
裏地には防風性バリアを挟んだ、吸湿性と透湿性を両立したワープニット・メッシュが備えられている。その為、この服を着ているだけで秋冬の冷ややかな風から身体を守ってくれる。裏地の縫製は丁寧で肌触りも良い。その品質の良さが、肌身を以て直に伝わってくるような製品である。一着備えて置くだけで、肌寒い季節には間違いなく重宝するアイテムである。
ファッション性が高いばかりでなく、アウトドア品質の機能性にも優れている点は実に信頼に値する。家の中であろうが、外出先であろうが、気軽に羽織ることのできるベスト。しかもタフネスに着回し、更には長年に渡って愛用できるような耐久性の高さも魅力的である。一見するところ中々に高価な代物であるが、間違いなき逸品であるから満足度も高い。それに結局のところ長きに渡って用いることを考えれば、費用対効果としては非常に良品である。
クラシックレトロX、USA製とベトナム製の違いを比較。
ところで工場を持たず、企画のみを行うファブレス企業。そんなパタゴニアの依頼するベトナム、マックスポート社の姿勢。それは、そこで働く労働者にとって働きやすい環境を整備し、適当な給与を支払う。長期就労を前提とした熟練工の育成することで、テクニカルウェア製造での品質の高さを維持。その事業を継続するため、従業員を重要な財産と位置づけて雇用するというもの。これは手間のかかる作業と熟練の作業によって完成する、レトロXに必要な環境という訳だ。
先進国から発展途上国へ生産拠点を移す。これまでアパレルメーカーは、そうした時代の流れにあった。アメリカのテキスタイルや縫製産業は衰退。パタゴニアも例外なく、依頼してきたアメリカ国内の契約工場は次々と廃業していく事となった。こうした状況はサプライヤーとして労働者の生活基盤の安定、生活賃金を重要な要素として位置づけてきた同社にとっても大きな課題ともなっている。
閑話休題、それは暖かで軽快、動きやすさも抜群。それでいながらデザイン性に優れている。防風性を透湿性を備えながら快適に行動すること、よりその生活を豊かにすることを約束してくれる逸品。それが何時までも変わらぬ価値であり、この製品が備えたる神髄であるといえよう。流行に左右されない生涯の友としての存在、それがクラシック・レトロXであり、更に生活や行動のし易さを抜群に良くしてくれるのが、クラシック・レトロX・ベストなのである。
ところでメイドインUSA時代の製品においては、着丈が比較的短く設定されていた。その為にインナーとして使用すると非常に使い勝手が良い。このようにしてクラシック・レトロX・ベストという製品も非常に息の長いモデルであるとはいえ、少しずつ仕様変更が行われている。そうして枝葉の部分は茂ったり折れたりと漸進しながらも、その根幹には断じて揺るぎがない。このことがモデルの改変を繰り返しながらも、長らく支持され続けている所以であるのだと思える。
ちなみにパーカーやトレーナーとの相性もとても良い。いずれの場合も運動着としてのルーツを持っていることから着心地よく、動き易い。そうした活動的でありながらお洒落も楽しみたいという需要にも非常にマッチした製品達。その際には、腕回りももたつかずに嵩張ることも無いというのが、袖なしタイプのベストの為せる利点。暑い寒いの調整が必要になる季節であっても、このような着こなしであれば、調整もし易く頼もしい使い勝手が確保されるのである。
パタゴニアのタグ、品番や製造年式の違い。見方と方法。
実はパタゴニアのタグには、製造された季節と年代が一目でわかるような表示が仕込まれている。まずは製品の内側に縫製されたタグを見る。そうしてSTYやSTYLEやITEMという項目に記された英数字に注目。英数字の後に続く5桁の数字が製品番号である。その後ろに記されたS、SP、F、FAが季節を表し、またその後の数字が年代を表している。
上記の場合には「2016年の秋」に製造されたモデルであることが一目でわかるという訳である。またSTYの後に記入された5桁の数字は、製品番号の識別に用いる事が出来る。因みに、最後に記されたRN#51884という数字については、パタゴニア社自体がアメリカの連邦取引員会において取得した番号。消費者保護などを目的として、米国内で販売される比較的高額の繊維製品について表示が義務付けられているもの。
次にアメリカ製。この場合には「2000年の秋」に製造されたモデルであるということが伺える。古着などの場合であっても、このようにして製造された年代を正確に割り出すことが出来るのは非常に便利である。更にたとえビンテージものであっても、十分に性能が担保されている良い品が数多く残っているのもパタゴニア社製のクラシック・レトロXの魅力である。つまり逆算的に鑑みて、耐久性についても信頼できる。
クラシック・レトロX・ベストのサイズ感と仕様
日本サイズと考えても良いくらいの表示サイズ。その使い方やスタイルに応じて、「少し大きめ~ちょうど良い」というくらいのサイズ感。インナーにおいてはほんの少しだけ大きめであっても、アウターでは丁度良かったりする。現行モデルにおいては、着丈が暖かさを確保するためにヒップまでの丈となっていることも留意したいポイント。
製品名 | メンズ・クラシック・レトロX・ベスト |
用途 | カジュアル、野外、旅行、作業 |
素材 | フリース素材 ・本体:ポリエステル100%(リサイクル50%以上) ・チェストポケット等:ナイロン100% |
生地の厚み | 17.9オンス |
質量 | 507g |
生産国 | ベトナム製 |
サイズ感 | 表示サイズSの場合(体感): ・日本サイズでMサイズと同等 ・身長約170cm、体重約60kgで丁度良い程度 ・着丈長め(ヒップ丈) |
備考 | ・表地に6mm厚のボンデッド・シェルパ・フリース使用 ・裏地に防風性バリアと吸湿発散性を備えたワープニット・メッシュ使用 ・ウインドフラップを備えたフロントジッパーを装備 ・ハイキュ・フレッシュ耐久性抗菌防臭加工 ・DWR(耐久性撥水)加工 ・チェストポケットと2つのハンドウォーマーポケットを装備 ・ハンドウォーマーポケットは裏起毛メッシュ素材 |
パタゴニアのクラシック・レトロX・ベストは、細身すぎず大きすぎない適度なレギュラー・フィットの製品とされている。サイズもXXSからXXLまでと幅広く取りそろえられているのも嬉しいところである。また公式サイトの製品ページでとても分かりやすく、Fit Finderというコンテンツで身長や体重や体形や好みなどを設定すると、好みのサイズ感を導き出してくれる。
サイズ(cm) | XXS | XS | S | M | L | XL | XXL |
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腰周り | 66 | 71 | 74-76 | 79-84 | 86-91 | 97-102 | 107-112 |
首周り | 34-36 | 36-37 | 38-39 | 39-41 | 42-43 | 43-44 | 44-46 |
着丈 | 79 | 81 | 84 | 86 | 89 | 91 | 94 |
胸囲 | 79-84 | 86-89 | 89-94 | 97-102 | 107-112 | 117-122 | 127-132 |
身長 | – | 165-173 | 167-178 | 173-183 | 175-185 | 175-185 | 175-185 |
レビュー:クラシック・レトロX・ベストを選択する無意識。
クラシック・レトロX・ベストは、肌寒いシーンにおいて、どんな時にでも無意識のうちに手に取ってしまう衣服である。近所のコンビニへ、スーパーへ、公園へふらりと出かける際にちょっと引っ掛けて。あるいは、旅行へ、キャンプへ、アウトドアへ中間着にもなる羽織として。また日常生活の中で、家事の際などにも着込む。いや、着込んでしまう。それは無意識なる選択なのである。
胸ポケットは名刺サイズ程度のものなら、難なく入れることが可能。最近の大きめのスマホとなると、ギリギリ入るか否かといった大きさである。あまり色々なものを収納するとは、想定されていない大きさ。すぐに取りだせる為、鍵などの貴重品や行動食を入れておく分には丁度良い。
また、襟元までジップを閉めれば、冷気の侵入する余地が無くなる。冬場にマフラー要らずの逸品である。インナーとして着込むと、オートバイ乗車においても暖かに過ごすことが出来る快適性。特に上着として、マッキーノクルーザーなどを羽織るとすれば、厳冬期においても何ら凍える心配がない。
一般的に考えると比較的高価な衣服である。しかし実用の品として日々の暮らしの中でタフに使用していると、身体に少しずつ馴染み、使用感が快く味わいとして反映される。そうして、おしゃれ着としてというよりは、生活に欠かせぬ道具として人生規模に常用していたい。この場合、コスパにも非常に優れた品として存在するはずである。
クラシック・レトロX・ベストの特に優れたポイント
まずは、その機能性の素晴らしさである。首元から腰部までも暖かに包み込み、冬を快適に過ごすことができる。防風性を担保しながらも、内側からの透湿性も確保されている。山登りでも通用する本格的なギアである。
しかしもっと本格的な運動量や活動性を必要とする場合の使用は、同じくパタゴニアのR1やR2といったテクニカルフリースウェアに譲りたい。それよりももっとカジュアルな使用で広範囲に活躍する代物であることは、特筆に値する。
更に汎用性も素晴らしい。ある時はミドルウェアとして、ある時はアウターウェアとして、多くの場面で活躍することができる。勿論、インドアであろうがアウトドアであろうが、全く以て違和感のない見た目をしている。時代の潮流に影響されない普遍的なデザイン。一生を共にできる耐久性。それらが相まって、長く支持され続けている製品であるという信頼もある。
そしてベストである事によって、更に使い勝手が良い。汚れ仕事や水仕事などの家事や野良仕事、更にはもっと活動的な場面であっても袖が邪魔になる事がない。勿論タウンユースに用いてもカジュアルライクにお洒落な鉄板アイテムである。つまりは気兼ねなく何時も着ている事ができる。そうした事からもワードローブに備えてあればこそ、ついつい無意識のうちに手にとってしまう衣服なのである。
クラシック・レトロXの苦手とするところ
ガシガシとアクティブに何年も使っていたい代物である。アウトドアシーンから生まれた名品であるから、優しく丁寧に扱うというよりは、ヘビーデューティーに用い倒したい。人生において、これから数十回と訪れたる肌寒い季節。いい品と共に多くの経験を経て、もっと味わい深くなるという経年変化を楽しんでいきたいものである。
当然ながら少しずつパイル素材にも変化が訪れるが、それは決して嫌な印象を与えるもではない。寧ろ共に過ごした数々の思い出の一部として存在するものとなる。そうして新品とは異なった意味で、特別に色鮮やかなレトロXが誕生していると思えるのである。
しかしガムのような粘着質な汚れが付着した場合、非常に取れにくい。無理にその部分を引きちぎったり、ハサミで切ったりするとパイルの剥がれが目立ってしまうことがある。そんな事にならぬように、丁寧に時間をかけて湯につけるなどしながら汚れと向き合いたい。そうしたことには多少、気を付ける必要はあるようである。
ブログ:着るのみで完成する着こなし。秋冬コーデの定番レトロX。
レトロXを着るだけで暖かで居ながらコーデのまとまりも良い。アウターとしても秀逸ながらインナーとしては最強の類である。運動量もそこそこな日常使いを考えると、裏地が付いたレトロXは暖かでいて、汗冷えも無い。ある程度の運動量と発汗なら耐えうる性能は、厳冬期なら特に重宝できる。パタゴニアの名品であることは間違いないレトロXは、ベストの使い勝手が組み合わさると尚更。屋内であろうが屋外であろうが、常々着ていたくなる存在となる。