CASIOのF-91Wといえばスタンダードカシオ、チープカシオの代表格として君臨するモデルの一つ。その名前の通りに極めて安価な腕時計であるのだが、その信頼性たるや抜群。コスパに優れるという言葉の方がむしろ安っぽいというもの。1989年から発売されているロングセラーモデルでもある。その頑強なる丈夫さ、安価ながらの正確さ、そうしたことが相まって中東の戦士たちにも普及しているとされる曰く付きのモデルである。
外観は丸みを帯びた柔らかなスクエアボディ、表示は直感的で見易いデジタル表示、長寿命の電池式クオーツといったものが大体の仕様となっている。しかも特筆すべき点には、身に付けていることすら忘れてしまう程の驚くべき軽量性と日常生活防水とは思えぬほどの耐水性が挙げられる。樹脂によるボディとバンドで全体の質量は21g、電池寿命は約7年と公称されており、こうした点を鑑みても、通常の腕時計と比べて著しく優れた仕様である。
F-91Wは、ださい。されど、それが良い。カシオの隠れ名機。

この製品が安価であるということだけで、この存在価値を語る事さえきっと無礼に当たる気がしてくる程に、F-91Wは工業製品として歴史に名を残す名機である事は間違いない。それ程に使えば使うほどに、元来備えたる素晴らしき価値を実感することができる。アウトドアなどで用い、水の中に浸かったとしてもビクともしない。たとえそれが流れの強い渓流の中であったとしても。経験に基づいたそのような事実は、誠に驚嘆に値するところ。
そのような事を考えれば、日常生活においての水仕事などというのも当然問題なし。激しい運動やアウトドアは勿論、それで疲れた身体を癒す温泉や銭湯などで湯船に浸かり、または泡立てた石鹸で身体を洗う。そうした行為は当然に可能であって、つまりは一日中、いや一年中つけていても何ら心配する必要のない腕時計なのである。そうして壊れない時計という意味では、同社の販売するGショックとも似通う部分である。

外観についてはカッコ良い。とは決して言えぬ程の厳然としたダサいという事実がある。だがしかし、だからと言って使っていて恥ずかしいかと言えば断じてそんなことは無く、そこにはキチンと工業製品然とした佇まいがある。実用のための時計という割り切りが、使用者の拘りを感じさせるところ。それが逆に全体としてのカッコ良さに繋がっているのだと思えるようなアイテムなのである。そしてそのチープ感が、何気にかわいらしさを備えている。ただ単純に安いだけでなく、この時計を選ぶという意味に含蓄があるような雰囲気が漂っているような名品だ。
ハマる人が続出する実用腕時計の極致、F-91Wの魅力。
しかしながら、その性能の秀逸さを備えながらも、チープカシオの魅力は高級腕時計とは明らかに異なるものであるし、精密さ、頑強さ、多機能さなどを鑑みた場合のGショックとも存在意義は異なるところである。このような部分で見た場合、この立ち位置は実に絶妙な塩梅にニッチなもの。隙間的な存在なのであるから、その必要性は多数派にとって重宝するものではないけれど、このF-91Wの価値が希有なものとさえ思えてくる程にマッチングしてしまう人々は確実に居てしまう事であろう。そのように思えば、歴戦の兵たちにも愛用者がいるという話は、それを物語る証左の一部のようにも思えてくる。

しかも安っぽい見た目が、実に可愛らしい。割り切って使っているか、寧ろそのチープ感を敢えて装着しているという心持が垣間見えるところ。だからこそ周囲に対して、いやらしさを全く感じさせることが無い腕時計なのである。それでも愛着のほうはといえば、販売価格に対して反比例していく。実用の品であるから、いつしか気心知れた幼馴染、長年連れ添った夫婦といった特に意識しない存在となっている。ただ敢えて認識した場合には、この腕時計に対しては絶大なる信頼を寄せていることに気が付くといったところなのである。
圧倒的な利点が、チープカシオの真なる価値を高める。

圧倒的な利点。軽い、薄い、安い、丈夫、長寿、防水。これらを満たす条件を鑑みた場合には、F-91Wを入手する意義は極めて深いものとなる。ただし、細々とした苦手部分は当然ながら存在していて、樹脂バンドが薄い為に切れ目が入ったり、サイドボタンが押しやすい代わりにポケットなどに入れておくと勝手に操作されたり、緩めに付けているとベルトの爪が抜けやすい等といった問題点も散見されるところである。そうした観点でこの製品を再度検討したところで、ついついこの腕時計を愛用してしまうという事実には変えられないものがある。

F-91Wを腕時計という観点で鑑みる。奢侈的であることを意図しない、実用的である事を主体として見てみると実に快い製品。時間が分かれば良い、日付がわかれば良い、曜日が分かれば良い。それらの需要を大いに満たす。補足としては、分かりやすいデジタル表示で24時間表示や午前午後表示など切り替える事もできるし、アラームやストップウォッチ機能なんかも付いている。そうすると必要最小限の需要を最大限に満たしてくれる腕時計であるということが出来るところである。
チープカシオやチプカシとは。ダサいけど可愛い腕時計。

スタンダードカシオというのが公称のブランド名にあるが、このシリーズは極めて廉価でありながらも頗る頑丈で信頼性も高い。安かろう悪かろうという言葉が無意味に思える程、安かろう良かろうを体現する腕時計である。チープカシオというのはいつの間にか人々に定着した愛称で、ダサ可愛い、ダサカッコイイ、そんなカシオの優れた腕時計シリーズの事である。
CASIO F-91W-1JFの使い方/F-91W-1JHとの違いとは。

カシオのF-91Wは2021年7月に型番が変わり、F-91W-1JFからF-91W-1JHとなった。ただし仕様の変更は全くない為、特に違いは無く、この二つは同じものであると見て良い。その外観はデジタル時計然としており、未来的でありながらレトロ感も感じさせる1980〜90年代を感じさせる工業デザインで好感が持てる。薄さと軽さに至ってはウルトラライトギア。いつ見ても圧巻の代物で、この長所に重きを置くならば、そう右に出る製品は無い。

ボタンは左側に2つ、右側に1つと合計3つ配置されている。各ボタンの横には説明的な文字もプリントされていて、ボタンに割り振られた機能が分かり易い。左上にはLIGHT、左下にはMODE、右下にはALARM ON・OFF/24HRと記されている。液晶画面には機能的な表記が左上にありつつ、曜日、日付、時間(時/分/秒)と直感的で分かり易い。そういう意味では、Gショックのスクエアモデルと同様である。
液晶表示を見やすくするバックライト。左側のみ点灯。

左上にあるLIGHTボタンでライトの点灯が行える。嬉しい機能ではある。ライトを点灯させると液晶の左側からのみ光が当てられる。この場合、申し訳程度の光ではあるから決して見易いとは言い難いが、それでも時間を確認するのに必要な照度は確保してくれている。真っ暗な中で、このバックライトを頼りに秒数まで確認しようとすると目を凝らす必要がある。ただし、値段から鑑みれば素晴らしく良心的な設計であると言うことができる。
基本的な3つのモード、切り替えの仕方。左下MODEボタン。

この時計に搭載されたモードは3つ、まずはデフォルト画面に相当する時刻モード、次にアラームモード、そしてストップウォッチである。勿論、前面部に記されているようにMODEと記されている左下のボタンを押す事で切り替えが可能である。「時刻モード→アラームモード→ストップウォッチ→時刻セットモード→時刻モード…」という具合に周回していくために直感的である。
時刻モード、日時設定の方法。左下のMODEボタンを3度押す。
日時の設定方法は、左下のMODEボタンを3度押して周回。時刻モードの秒数が点滅する状態まで持っていく。点滅状態のものが選択されており、これが変更可能ということ。月日や時分秒や曜日の設定が行えるが、左上のLIGHTボタンで選択することが可能となっている。ちなみにこのボタンを押すごとに、ライトが同時に光る仕様になっている。

そして、点滅表示の選択したものを右下のALARMボタンを何度も押しながら変更していく。ただし秒数の場合には、右下ボタンがリセットとなり00秒となる。その他の表示の場合には、一回押すごとに次の数字や曜日に変化していく事になる。決定する場合には左下のMODEボタンを押すことで設定が完了する。
アラームと時報の切り替え、右下ALARMボタンでオンオフ設定。

アラームモードは時刻モードの次の項目で、ALと表示される。ちなみにこの状態でALARMボタンを押すことで、「アラームと時報、または同時に鳴らす」という3パターンを選択することができる。アラームマークは音波のような絵柄、時報は鈴のような絵柄。オフにする場合には、表示が消えた状態にまで持っていくと良い。

次にアラームの時間を変更する場合には、左上のLIGHTボタンを押す事で時間や分を選択する。点滅した状態で時間や分を右下のALARMボタンを押す事で変更していくことが出来る。決定したい場合には左上のLIGHTボタンを1〜2回押すと良い。もしも左下のMODEボタンを押した場合には、アラームをオン設定した状態のままで時刻モードへ移動する事となる。
ストップウォッチ。スタートストップは、右下ALARMボタン。

ストップウォッチモードはSTと表示されており、とても分かり易い。右下のALARMボタンでスタートとストップを行う。左上のLIGHTボタンでリセットすることができる。

