ディスコやクラブシーンなどで用いられるEDM。今では多くの音楽ジャンルが誕生し、または細分化されている。楽曲に触れた際、DJに導かれて気持ち良いノリを体感した際、そうした好みの音楽がどのような構成や特徴を備えているのかという事を知る事で、より多くの出会いが待ち受けている。
またはDTMにおける制作意欲が湧いた時、まずは自分の好きな音楽ジャンルを見つけて分析する事もある。そんな時には、著名な音楽系アプリで様々な楽曲と出会い、自分の好きなアーティストやジャンルを探訪。それらを聞いたり作りながらノリノリになったり、感慨に浸ったり、そんな風に楽しめることで益々音楽趣味における活動意欲が湧き立つもの。
音楽ジャンルは、ある時は組み合わさり、ある時は新たな手法が生み出され、そうして日々新しいジャンルが開拓されている。しかしその垣根は曖昧模糊としている事も多々あり、その研究は精細な地図というよりは道標のようなものでしかない。それでも楽曲分析は、入り口としてもイノベーションとしても重要なテーマとなり得る。DTMであれば、それによって製作者の機転と発想が生まれ、更なる境地を開拓するという事にも繋がっていたりする。
欧州のシンセポップ、日本のテクノポップとは。
起源 | 1980年代(日本、ドイツ、イギリス) |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、ボコーダー、サンプラー、ベース、ドラム等(生楽器、電子楽器) |
機材 | Roland TR-808、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、YAMAHA DX7、Casio CZ-101等 |
テンポ | 100~120BPM程度 |
リズム | 8ビート、16ビート |
アーティスト | クラフトワーク、ディーヴォ、Y.M.O等 |
エレクトロポップと比べてよりロックとの親和性が高い。生楽器と電子楽器の融合という側面もあり、エレクトロポップよりも比較的温かみがある音色を特徴とする。1980年以降のポリフォニックシンセサイザーの誕生という技術的進化もあり、シンセサイザーの可能性が飛躍的に発展していくことになった。人間の生み出すグルーヴ感を機械的リズムに置き換える試みは、音楽の分岐点でもあった。
エレクトロポップとは
起源 | 1980年代(イギリス)、シンセポップより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、ボコーダー、サンプラー、ベース、ドラム等(生楽器、電子楽器) |
機材 | Moog minimoog、Roland TR-808、JUPITER-8、JUNO-60、YAMAHA DX7、Casio CZ-101等 |
テンポ | 100~120BPM程度 |
リズム | 8ビート、16ビート |
アーティスト | クラスター、クラフトワーク等 |
シンセポップよりも無機質で淡白なイメージ。機械的な電子的音色が多用されており、より電子音楽に依拠した指向性がある。シンセポップと同様にハウスやテクノやヒップホップなどへも影響。当初のモノフォニックシンセサイザーなどによる技術的制約を背景にして発展した分野。特にクラフトワークのアウトバーンやロボットなどという楽曲は、音楽史的・世界的に見ても多くのアーティスト達に影響を与えている。
ハイエナジーとは、ユーロビートの原型。
起源 | 1970年代(イギリス、アメリカ) |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、鍵盤楽器等(生楽器、電子楽器) |
機材 | Moog minimoog(1970年代~)、Roland D-50、D-550(1980年代) |
テンポ | 108〜120BPM程度(アメリカ)、120~160BPM程度(イギリス) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、8ビート、16ビート |
アーティスト | イブリン・トーマス、パトリック・カウリー等 |
イブリン・トーマスの楽曲である「Hight energy」がそのままジャンル名の由来となった。特徴としては、シンセベースによるオクターブ奏法(低音と1オクターブ上の高音が交互に並びハイハット的役割を担う)、ドラムマシンによるクラップ音を頻繁に使用、ヨーロッパでは速いテンポが支持されてユーロビートへと発展。パトリック・カウリー氏には、電気グルーヴの石野卓球氏など多くのアーティストが影響を受けた。
ユーロビートとは
起源 | 1980年代(ヨーロッパ全域)、ハイエナジーより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー等(電子楽器) |
機材 | Roland D-50、D-550、JUPITER-8、αJUNO-1、DABCE M-DC1、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 120〜160BPM程度(80年代124〜138程度、90年代150〜160程度) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | シニータ、パナナラマ、アンジー・ゴールド、デッド・オア・アライブ、カイリー・ミノーグ等 |
この分野は日本のバブルを象徴とする有名楽曲のオンパレードで、日本人アーティストによるカバーも多い。マハラジャやお立ち台やボディコン等と言えば、この時代と楽曲イメージは否応が無く想像できる。楽曲的な特徴としては、歌唱の無い部分に8小節のフレーズ「シンセリフ」、シンセベースによるオクターブ奏法(低音と1オクターブ上の高音が交互に並びハイハット的役割を担う)、ドラムマシンによるクラップ音を頻繁に使用、ただしギターとボーカルは生楽器の美しい旋律も用いられる。
テクノとは、終始反復する機械的旋律が魅力。
起源 | 1980年代(アメリカ) |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー等(電子楽器) |
機材 | Roland D-50、D-550、JUPITER-8、αJUNO-1、TR-808、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 120〜140BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | アンダーワールド、ケンイシイ、石野卓球等 |
この分野はクラブシーンで盛り上がるダンスミュージックとして、世界的にはハウスと並んで高い人気を誇る。短い小節のリピート反復を繰り返し、綺麗な音色のリードシンセが用いられる。ただし旋律そのものよりも打ち込み楽曲的なリズム感を重視したサウンドが特徴的。このような特徴は、ミニマルミュージックにも準拠している。つまりはコード理論のみならず、ノンコードでさえ成立するモード理論との相性も良い。日本人においてはDJプレイも人気で東洋のテクノゴットの異名を持つケンイシイ氏や石野卓球氏等が特に有名な作曲者であると言える。DTMとDJプレイという二つの歯車が噛み合わさった時、そこに猛烈なパワーが生み出されることが伺い知れる。
デトロイトテクノとは
起源 | 1980年代中頃(アメリカ)、テクノより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、パッド系音色等(電子楽器) |
機材 | Roland D-50、D-550、JUPITER-8、αJUNO-1、TR-808、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 120〜140BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | ホアン・アトキンス、デリック・メイ、ケビン・サンダーソン等 |
テクノらしく短い小節のリピート反復を繰り返し、楽曲にストリングスのパッド系音色が多く用いられる。16ビートのシーケンスや展開に複雑なリズムパターンが組み合わさるというのが特徴として挙げられる。テクノのゴッドファーザーことホアン・アトキンス氏が、その同級生であったデリック・メイ氏とケビン・サンダーソン氏にDJプレイを教えたことで、デトロイトテクノは誕生した。彼らの楽曲はハウスへも影響を与え、またホアン・アトキンス氏がローランドのTR-909をシカゴでDJをしていたフランキー・ナックルズ氏に売却したことが、ハウス誕生の発端となったともされている。
テックハウスとは
起源 | 1990年代(アメリカ、イギリス、ドイツ等)、テクノとハウスの中間・融合 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー(電子楽器) |
機材 | Roland D-50、D-550、JUPITER-8、αJUNO-1、TR-808、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 125〜135BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | フィッシャー、ハードウェル、グリーン・ベルベット、カール・コックス等 |
テクノとハウスの中間的で両方の要素を融合したカテゴリー。バスドラムはハウスよりは控え目でテクノ的な無機質さを継承、音数が少なくミニマルな楽曲イメージと暗く冷たい印象のマイナーコードを基調とした進行の場合が多い。サンプラーなどを用いたワンフレーズが繰り返し使用される事も多い。テックハウス自体が音楽シーンで一躍脚光を浴びたのは、1990年から2000年代であるとされる。それ以降、堅い支持を背景にして世界的に見ても非常に人気の高い音楽ジャンルとなっている。
ハウス(シカゴハウス)とは、躍動するリズムが魅力的。
起源 | 1980年代中頃(アメリカ)、テクノより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 115〜130BPM程度(テクノより遅め) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | フランキー・ナックルズ、グリーン・ベルベット等 |
テクノと比べて歌ものが入る事も多くメロディアスな旋律、強めのキックやリズム感が魅力的なジャンルである。映画などからサンプリングしたボーカル音声がチョップされて終始連続使用されることもあった。テクノとの区別が曖昧な楽曲も勿論存在する。DJのフランキー・ナックルズ氏がシカゴで開いていたウェアハウスというゲイの黒人向けのR&B系ディスコから「ハウス」という名が付けられた。使用される機材として、特にRoland社のTR-909、TB-303の存在は外せない。シカゴハウスによる電子音楽の発展は、近隣都市デトロイトの黒人DJたちにも相互に影響を与え、デトロイトテクノの下地が醸成された。
アシッドハウス(アシッドテクノ)とは
起源 | 1980年代後半(アメリカ・シカゴ、イギリス・ロンドン)ハウスより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 115〜130BPM程度(テクノより遅め) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | 808ステイト、ハードフロア等 |
DJピエールによって編み出された方法。ローランド社TB-303のツマミを自在に動かすことによって生まれる独特のうねりは、アシッドベースとも呼ばれ、この分野の最大の特徴とも言える。薬物における幻覚作用を思わせる病みつきになるような気持ちの良さに擬えて、アシッドと呼ばれる。シンセサイザーのフィルターやイコライザーなどを用いて音色変化するスウィープ奏法が用いられる。TB-303のレゾナンスやカットオフなどのツマミを自在に操る際の音色変化は非常に面白い。またアシッドハウスの流れを汲んだアシッドテクノにおいては、延々と繰り返す小節メロディと組み合わされる。残念ながらアシッドハウスやテクノは、薬物の乱用が危険視されたレイヴパーティで用いられる事も多く、それらと同一視され、快楽主義的で無秩序で退廃的な音楽であると見做される事もあった。ニコちゃんマークで知られるスマイリーフェイスは、アシッドハウスのシンボルマークのように扱われる。
フレンチハウス・フレンチタッチ(フィルターハウス)とは
起源 | 1990年代後半〜2000年代(ヨーロッパ)、ハウスより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 110〜130BPM程度(テクノより遅め) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | ダフトパンク、フェニックス、ファントム、エアー、カシアス等 |
1970代後半〜1980年代前半までのディスコ楽曲からサンプリング、シンセサイザーのフィルターやEQなどを用いて音色変化、シンセサイザーのフェイザー系エフェクトを重視するのが特徴。この分野では日本の漫画家、松本零士氏とのコラボレーションでアニメーションオペラを製作したダフトパンクも著名。アメリカの伝統的なハウスの系譜を引き継ぎながら、ジャズやソウルフルな楽曲からもインスピレーションを取り入れていたりする。このフレンチタッチもレイヴが無ければ生まれなかったであろう音楽カテゴリーで、ダフトパンクもレイヴパーティーで人気となったDJたちであった。
ハードハウスとは
起源 | 1990年代(アメリカ)、ハウスより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 130BPM以上程度(主流130〜140BPM程度) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | ジュニア・ヴァスケス、アーマンド・ヴァン・ヘルデン、中村直等 |
キック音のカット、無音部分のブレイクを多用し、またスネアドラムのロールなどによって展開していく特徴がある。それまで主流であり続けたシカゴハウスやガラージュにとって代わるような形で、当時のクラブシーンを席巻した。しかしその後に台頭するテクノやトランスによって、その人気は逓減しつつある。それでもハードハウスから影響を受けて派生した音楽も多く、それらは更にテクノやトランスからの影響を受けるなどして変化を続けている。
ディープハウスとは
起源 | 1980年代(アメリカ)、ハウスより派生またはハウスそのもの |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 125BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | マイク・ポズナー、ジャック・ロンドン等 |
美しいメロディ、シンプルなビートで構成される。派手さよりも綺麗な音色が用いられることが多く、緩やかな展開を特徴とする。ソウルやジャズの要素を取り込みマイナーコードが多用され、その他にもディスコやガラージュなどから影響を受けている。ジャンルとして確立していたハードハウスやアシッドハウスなどと区別するために、従来単純にハウスなどとだけ言われていたものが、いつの間にかディープハウスと呼称されるようになったものだとも説明される。狭義の意味において、このジャンルは大規模で商業的なEDMとは区別される本質的なハウスを意味する場合もある。ソウルフルでありながらドラムマシンによるリズムによって構成されているのも特徴。近年、チル系リラックス系BGMとしても愛好者を集めている。
プログレッシブハウスとは
起源 | 1990年代(ヨーロッパ全域、オーストラリア、アメリカ)、ハウスより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 125〜130BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | アヴィーチー、ゼッド、ティエスト等 |
レイヴが流行していた地域を中心として発展したハウスの形態で、伝統的なハウスやアシッドハウスからの脱却が図られた。伝統的なハウスとは異なるという意味で、または区別するという意味で、進歩的を意味するプログレッシブという言葉が用いられた。後にはレイヴというよりもクラブシーンでその勢いを伸ばした。特徴としては、ディープハウス的な特徴でもある大きめのリフ、長い楽曲である事が挙げられる。連続した小節を用いた後に、新たなメロディに差し替えたりと楽曲の展開が為されていく。EDMとしては、ビッグルームハウスに並ぶ主流派の一つと見做されている。この界隈では特に有名有望な若手DJトラックメーカーとしてアヴィーチー氏の名を挙げる事ができるが、惜しむらくは28歳の若さで逝去してしまった。
エレクトロハウスとは
起源 | 1990年代後半(世界的流行)、EDM全般より派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 100〜140BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子) |
アーティスト | デッドマウス、ポーター・ロビンソン、デヴィット・ゲッタ、中田ヤスタカ等 |
長く続く綺麗なパッド系シンセ、短く高音のリフが延々と繰り返される。その際、空間系エフェクトを多用。ドラムとしては激しい強めのキック、最小限の中間パーカッション。コンプレッサーおよびディストーションのノコギリ波から作られる潰れた音色の低音がサイレンのように鋭く用いられる事が多いのが特徴。美しい歌声のボーカルやサンプリングを組み合わせた楽曲も多い。シンセポップやテックハウスやその他のEDMジャンルからの影響を多大に受け、またはそれぞれが融合した音楽であるとされる。この界隈では、中田ヤスタカ氏のユニットであるCAPSULE、彼がプロデュースするPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅは、日本において高い名声を得ている。
トロピカルハウスとは
起源 | 2000年代中頃(世界的流行)、ディープハウスより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー、マリンバ、ギター、サクソフォン(生楽器、電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 110〜115BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | ボブ・サンクラー、カイゴ、マトマ、ロスト・フリクエンシーズ等 |
ディープハウスから派生したトロピカルハウス。勿論、ハウスの伝統を踏襲し、キックを主体とした4つ打ちが基本。ただし、比較的ゆったりとしたテンポを刻む。トロピカル感のあるカリブ諸国で用いられる民族的楽器が導入される事もある。ディープハウスの特徴でもある美しいメロディラインとシンプルなビートを特徴とする。また歌唱を中心に据えた歌もの楽曲であることが多い。明るく陽気なイメージがよく似合い、メジャーコードが主だって用いられる。時にはドロップ(サビ)において、ボーカルやコーラス部分にウェットで多めの空間系エフェクトが配置される。
ビッグルームハウスとは
起源 | 2010年代(イギリス)、エレクトロハウスより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー、ボコーダー等(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 125〜132BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | マーティンギャリックス、デヴィットゲッタ、ニッキーロメロ、マディックス等 |
大部屋・ビッグルームの名の通り、フェスなどの大会場にて大多数の観衆に向けたダンスミュージック。更にハウスと同様に4つ打ちのリズムが用いられる。分かりやすくシンプルなメロディラインやドロップ(サビ)で誰もが盛り上がれるように設計されている事が特徴。ドキュメンタリー映画「What me started」で取り上げられたDJ界の大物カールコックス氏と対比して取り上げられた若きDJトラックメーカー。DJの頂点にまで上り詰めた、マーティンギャリックス氏の代表作アニマルズもこの分野の楽曲を代表するものである。このジャンルはEDMにおいては、主流派の一つと見做されている。
フューチャーハウスとは
起源 | 2010年代(イギリス)、ディープハウスとガラージュより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー、ボコーダー等(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 120〜130BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | チャミ、メスト、ドンディアブロ等 |
金属音のような音色を用いたベースライン、ハウスとしての4つ打ちスタイルを融合させシンセリフやノイズ、空間系エフェクトを用いたサウンドが特徴的。明るいポップさと暗いダークさを兼ね備えた楽曲である場合が多い。コード的にはメジャーもマイナーも使われ、楽曲のコントラストが惹きつける部分。ダンスミュージックとしての性質も兼ねながら、聞かせるハウスとしての性質も併せ持つ。このような意味合いにおいて、エレクトロハウスとディープハウスの中間に位置するとも言われている。全てを兼ね備えたとも、ある意味ではどっちつかずとも言えるハウスである。
トランス(ジャーマントランス)とは、高速テンポを刻む。
起源 | 1980年代中頃(ドイツのフランクフルト)、アシッドハウスやテクノより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 125〜150BPM程度(一般的にはテクノより高速テンポ) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | アーミン・ヴァン・ブーレン、ダッシュ・ベルリン、ジェームス・ディモンド等 |
短いシンセサイザーのうねったような旋律を最初から最後まで反復させる。そのように生み出される独特の音色によって、トランス状態のように幻覚的な作用を思わせる事から名付けられた。高揚感に導くために、変化の少ないリズムやシンセのノイズが組み合わされる。似たような特徴を備えたアシッドハウスやアシッドテクノなどから派生した音楽カテゴリーで、それらがニュービートなどと融合。テクノよりも高速テンポで、その高揚感を活かした疾走感のある展開やエフェクトを使用した楽曲が多い。空間系プラグインを配置した美しいボーカルの歌声と組み合わされる事もある。迫力あるキック音と鋭さのあるシンセがシンクロして生み出される大きな推進力は圧巻。
アシッドトランスとは
起源 | 1990年代中頃(ヨーロッパ)、アシッドハウスやテクノより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 125〜150BPM程度(一般的にはテクノより高速テンポ) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | アートオブトランス、ハードフロア等 |
ローランドTB-303を用いるなど、伝統的なアシッドベースのうねりで旋律や展開を作る。アシッドハウスやアシッドテクノと同根であるが、トランスであるだけに高速なテンポを刻むことを特徴としている。またドイツで生まれたジャーマントランスに比して、イギリス国内で支持されており、どちらかといえばメジャーコードを主に使用した明るい旋律を特徴としている。延々と繰り返す短く鋭いリフなども特徴。サイケデリックトランスと比べれば、大衆の統一感や一体感を生み出すノリの創出で多幸感へ導く。
ゴアトランス(604)とは
起源 | 1990年代(インドのゴア地方)、トランスより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー、民族楽器(生楽器、電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、SP-404SX、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 125〜150BPM程度(一般的にはテクノより高速テンポ) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | ジュノリアクター、ジクーハ等 |
イスラム音階などの民族音階を用いた旋律、民族打楽器と宗教的音声などが用いられる事もある。例えばシタールといった弦楽器、タブラーといった打楽器はサイケデリックミュージックで使用される事も多い。またディストーションなどで潰した音色のシンセ、アシッド感のあるベースなどが用いられたりする。トランスはヨーロッパで誕生したが、ヒッピーやバックパッカーが集まるインドのゴアを中心に独自に発展した音楽ジャンル。主にドイツやイギリス、イスラエル出身のアーティストによって生み出されていた。これもまた薬物の横行など退廃的であると見做される事もあったレイヴや野外フェスのような場面で支持された。ジャーマントランスとは趣向の異なるトランス派閥と捉えられる事もある。
サイケデリックトランス(サイトランス)とは
起源 | 1990年代後半(イギリス、ドイツ、イスラエル、ゴア)、ゴアトランスより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー、民族楽器(生楽器、電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、SP-404SX、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 140BPM前後程度(主流145BPM程度、2010年代以降の主流136〜142) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | アストリクス、ビニビシ、シュポングル等 |
サイケデリックとは合成薬物などによる幻覚作用を想起させ、また音楽や絵画などでそのような感覚を指す用語でもある。伝統的文化や権威に対して否定的なヒッピーと結びついたことで広まる事となった。ゴアトランスがより宗教的で呪術的要素を伴った音楽ジャンルであったのに対して、もっと商業的な音楽ジャンルとなっている。ゴアトランスで主流であったイギリスやドイツやイスラエルやゴアの他、日本やブラジルにまで広まった音楽ジャンル。また民族楽器などが多く用いられていたゴアトランスと比べても無機質で金属的な音色が多用されているのも特徴である。
ハードコアテクノとは
起源 | 1990年代中頃(アメリカ・ニューヨーク、オランダ・ロッテルダム、オーストラリア・ニューカッスル等)、ニュービートより派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 160〜200BPM程度(または、200BPM以上) |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | マークトローネ、マスカリナムユナイテッド、スクーター、村木幸星等 |
サイレン音のようなエフェクト、鋭く攻撃的なシンセによる旋律が用いられる。歌ものとしても咆哮のような声が用いられたり、とにかく激しく暴力的なほどの高速テンポと重厚ビートによって構成される。また日本においてはJコアと呼ばれる分野が台頭し、ハードコアテクノに日本的解釈が加わってマンガやイラスト、アニメーションなどサブカルチャーやボカロなどと結び付き、電脳空間において支持された。
ハンズアップ(ユーロトランス)とは
起源 | 1990年代中頃(ドイツ)、ユーロダンスやハードコアテクノ等より派生 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 138〜145BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | W&W、マーク・オー、イタロブラザーズ等 |
ハードなキック、ハードなベースライン、音色が少なくアップテンポ、メロディアスな旋律が特徴。ハウスやテクノ、ユーロビートやハイエナジー、勿論トランスなどEDM全般から影響を受けて組み合わさり、融合し合いながらドイツで誕生したカテゴリー。トランスの要素としての疾走感があり、ビルドアップなどでカットアップしたボーカル音声が連続して用いられたりする。また、鋭くキレの良いリードシンセの音色を用いたリフが繰り返される。
ダッチトランスとは
起源 | 1990年代後半(オランダやヨーロッパ)、ユーロトランスの一形態 |
楽器 | シンセサイザー、ドラムマシン、シーケンサー、サンプラー(電子楽器) |
機材 | Roland TB-303、JUPITER-8、JUNO-60、JUNO-106、JP-8000、JP-8080、TR-909、YAMAHA DX7等 |
テンポ | 138〜145BPM程度 |
リズム | 4つ打ち(4/4拍子)、16ビート |
アーティスト | アーミンヴァンブーレン、ダッシュベルリン、ティエスト、フェリーコーステン等 |
ローランド社JP-8000などのシンセサイザーに搭載されたSuper Sawオキシレーターの音色で厚みを出して使用し、壮大でメロディアスな旋律が特徴的。ダッチトランスと呼ばれる形態でありながら、トランスといえばダッチトランスを思い起こす程に著名なDJが多い。オランダは間違いなくEDMが活発な地域の一つ。イギリスの情報誌DJマガジンの発表する世界のトップ100DJSにおいて頂点や上位層に名を連ねる有名DJばかりである。ダッチハウスとの境界線は未確定で、ハウス寄りのものとトランス寄りのもので曖昧に区別されている。