【腸活】腸内細菌叢を整えて生殖力アップ!成功する妊活の新戦略

食と健康

近年の研究成果から、腸内細菌叢を整えることが生殖機能に与える影響については、多方面で示唆されています。例えば、複数の動物実験や臨床研究の成果から、腸内細菌叢を整えることによって、男性の精子形成や運動性、女性の子宮内環境の改善、さらにはホルモンバランスや免疫機能の正常化を通じて生殖機能に良い影響を与える可能性が示唆されています。

これらの研究成果はまだ発展途上ですが、総合的な健康管理の一環として腸内環境を整えることは、妊活の成功率向上に寄与する一因となると期待されます。各個人の状態に応じた食生活や生活習慣の改善が、長期的な生殖機能の改善に繋がるものと考えられています。

妊活に影響する腸活

腸内フローラは妊活にも影響

妊活を成功させるためには、全身の健康状態が大きな役割を果たします。その中でも腸内環境の整備は重要なポイントとなります。特に、乳酸菌などの善玉菌が豊富な腸内環境は、免疫調整や炎症抑制、さらにはホルモンバランスの維持に寄与するため、妊活に適した体づくりに役立つものとされているのです。

具体的には、乳酸菌は腸内のバリア機能を保ち、有害な細菌の侵入を防ぐ働きがあります。また、腸内環境が整うことで全身の炎症状態が改善され、ホルモンの代謝や免疫状態が良好になり、結果として生殖器官の健康も保たれやすくなります。これらの効果は、男女ともに不妊のリスクを低減する可能性があると、複数の研究で示唆されています。

そのため、妊活に向けた食生活やサプリメントで乳酸菌を含むヨーグルトなどの発酵食品の摂取、またはプロバイオティクスの利用が推奨されるケースが多く見られます。ただし、具体的な必要量やバランスは個人差があるため、医師や専門家の指導のもとで取り組むことが望ましいところです。普段目にすることはない細菌たちの黒子の働き。彼らの存在を時に気にして過ごしたいところです。

1. 男性生殖機能への影響

人間に重要な腸内細菌叢
  • 精子形成や運動性の改善
    マウスを用いた実験では、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)が精巣上体に局所的な炎症を引き起こし、その結果、精子の形成や運動性が低下することが報告されています。腸内環境を改善することで、これらの炎症が抑えられ、精子の質が向上する可能性が示唆されています。炎症性サイトカインの上昇や免疫細胞の活性化が、精子の質に悪影響を与える可能性が指摘されています。
  • ホルモンバランスの調整
    腸内細菌叢はインスリン抵抗性とも深く関連しており、これが男性ホルモンの分泌や精子形成に影響を与えることが考えられています。善玉菌を増やすことでインスリン感受性が改善され、結果としてテストステロンなどの性ホルモンのバランスが整い、精子の生産や質の向上につながる可能性があります。

2. 女性生殖機能への影響

腸活と妊活の関係
  • 子宮内環境の最適化と着床率の向上
    女性では、子宮内の菌叢(子宮内フローラ)の状態が受精卵の着床率や体外受精の成功率に影響することが示されています。乳酸菌が多い子宮内環境は、酸性環境を維持し、病原性細菌の増殖を抑えることで、受精卵の着床に適した環境を作るとされています 。これが体外受精の成功率や自然妊娠率の向上に寄与する可能性が報告されています。
  • エストロゲン代謝への影響
    腸内細菌はエストロゲンの代謝にも関与しており、葉酸やその他の栄養素とともに、エストロゲンのバランスを維持することが、子宮内膜の状態を整えるうえで重要と考えられています。適切な腸内環境は、エストロゲンの過剰または不足を防ぎ、ホルモンバランスの正常化を促す可能性があります。腸内細菌は、たとえばβ‐グルクロニダーゼを産生します。この酵素は、肝臓で抱合されたエストロゲンを脱抱合し、再吸収を促進することで、体内のエストロゲン濃度を調節します。腸内環境が乱れると、エストロゲンの過剰または不足が生じ、子宮内膜の状態や着床環境に影響を与え、結果として妊娠率や流産率に関わるという学説があります。

3. プロバイオティクス・プレバイオティクスの役割

発酵食品を食べ、善玉菌を補給

善玉菌や日和見菌、そして悪玉菌の割合は、2:7:1が理想的な腸内フローラであるとされています。善玉菌は人間の味方であり、有益な効能をもたらしてくれる細菌たち。悪玉菌はその逆で、われわれの健康を蝕む可能性がある細菌たち。そして、日和見菌は腸内環境によって、その立ち位置を善玉側についたり、時に悪玉側についたりする細菌たち。日々、腸内においては関ヶ原の戦いさながらの勢力争いが繰り広げられています。宿主としては、やはり善玉菌たちに兵糧などの補給物資を支援してあげたいところ。いかに兵站を切らさずに居られるか。それこそが大きなポイントになり得ます。

直接的な菌叢の改善
発酵食品やプロバイオティクスサプリメント、また食物繊維を摂取することによるプレバイオティクスは、腸内における乳酸菌、ビフィズス菌など善玉菌の増殖を促進します。葉酸合成能力を持つ細菌群にとって、これらの栄養素はエネルギー源や成長因子となり、全体のバランス維持に寄与すると考えられているのです。

4.腸内細菌叢と生殖機能に関する学説

腸内細菌層は生殖機能にも影響
  1. 脳腸相関を介した神経内分泌調整説
    腸内細菌叢は、腸‐脳軸(脳腸相関)を通じて中枢神経系に影響を与え、これが下垂体‐性腺軸(HPG軸)のホルモン分泌に影響するという説があります。具体的には、腸内細菌の代謝産物(例:短鎖脂肪酸や神経伝達物質の前駆体)が、ストレスホルモンや性ホルモンの分泌を調整することで、排卵や精子形成に間接的な影響を及ぼす可能性が示唆されています。
  2. エピジェネティック修飾説
    腸内細菌が生成する代謝産物は、宿主の細胞におけるDNAメチル化などのエピジェネティックな修飾を促進する可能性があります。こうした修飾は、卵子や精子の質、または生殖器官の機能に影響を与えると考えられており、腸内環境の変化が長期的に生殖機能に反映されるという学説もあります。
  3. 免疫調整と局所環境の最適化説
    腸内細菌叢の改善は、全身の炎症状態や免疫機能の調整にも寄与します。免疫細胞の約60%が腸内に存在するとされるため、腸内環境が健全であれば、免疫系が過剰に反応することなく、子宮内環境や精巣内の微小環境が保たれやすくなります。これにより、受精卵の着床率や精子の健康が間接的に向上する可能性があるという説もあります。

これらの異なる視点は、従来の「炎症やホルモンバランスへの直接的影響」だけではなく、腸内細菌叢が神経内分泌系やエピジェネティックなレベルで生殖機能に影響を及ぼす可能性を示しており、今後の研究によってそのメカニズムの解明が期待されています。

5. 総合的な影響と長期的な展望

人体に影響するプロバイオティクス

腸内細菌叢は免疫機能やホルモン代謝、インスリン感受性に関与しており、これらの要素はすべて生殖機能に重要な影響を及ぼします。

  • 短期的変化としては、プロバイオティクスや食物繊維の摂取開始後数日から1〜2週間で腸内細菌の組成に変化が見られる場合もありますが、
  • 生殖機能への影響は、腸内環境の持続的な改善(たとえば、1ヶ月以上の継続的な取り組み)によって、ホルモンバランスの調整や免疫状態の改善といった形で表れると考えられます。

腸内細菌叢のバランスを改善する期間は、個人の現在の状態、摂取する食品やサプリメント、生活習慣などによって大きく異なります。ただし、これはあくまで一般論であり、個々の体質や既存の腸内環境、生活習慣の改善度合いによっては、さらに時間がかかる場合もあります。継続してバランスの良い食生活や適切なプロバイオティクスの摂取を心がけることが大切です。

葉酸摂取と腸内細菌叢への影響

葉酸は細胞のDNA合成やメチル化反応に不可欠な栄養素で、ヒトだけでなく腸内細菌にとっても重要な因子です。一般的な食事や適切なサプリメントによる葉酸摂取は、宿主の健康維持に寄与するだけでなく、腸内細菌群の活動や相互作用にもプラスの影響を与えると考えられています。

  1. 栄養源としての役割
    腸内細菌の中には、葉酸やその誘導体を利用して自らの細胞分裂や代謝を促進する菌もあります。適切な葉酸の供給は、こうした菌の生育をサポートし、結果として腸内細菌叢全体のバランス維持に寄与する可能性があります。
  2. 内因性葉酸産生との相互作用
    一方で、ヒトの腸内には一部の細菌が葉酸を自ら産生する能力を持っており、これが宿主に供給されることも知られています。外部からの葉酸摂取が過剰になると、これら自家産生細菌の相対的な役割や生態系のバランスに影響を与える可能性も指摘されています。特に妊娠期においては、過剰な葉酸摂取が母体の腸内細菌叢の構成を攪乱し、将来的に仔の代謝性疾患リスクに影響するとの研究報告もあります。
  3. ホストと腸内細菌の共生関係
    適切な葉酸摂取は、宿主の免疫機能や代謝状態を整えることで、腸内環境そのものを健全に保つ助けとなります。結果として、腸内細菌叢の多様性や安定性が向上し、全身の健康維持にも寄与すると考えられています。

通常の食事や推奨されるサプリメント量での葉酸摂取は、腸内細菌にとっても有益であり、共生関係を強化する可能性があります。しかし、特に妊娠期などに極端な過剰摂取が続くと、腸内の葉酸生産能力を有する菌のバランスに影響を及ぼすリスクが示唆されており、適正な摂取量の維持が重要です。したがって、葉酸は適切な量を摂取することで腸内細菌叢にもプラスの影響を与えると考えられますが、過剰摂取には注意が必要です。

妊活における腸内フローラを整える生活

腸活を支える食事

腸内細菌叢のバランスは、ホルモン代謝や免疫調整に大きく関与しており、生殖活動にも間接的に影響を及ぼします。以下の方法や食品が、腸内細菌叢を整えるうえで有益と考えられています。

  1. 発酵食品の摂取
    ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌、漬物などは、乳酸菌やその他の善玉菌が豊富に含まれており、腸内環境を整える効果が期待されます。
  2. 食物繊維・プレバイオティクスの摂取
    野菜、果物、全粒穀物、豆類などに含まれる食物繊維は、腸内細菌の栄養源(プレバイオティクス)となり、善玉菌の増殖を促します。特にオリゴ糖やケストースといった成分は、葉酸を生成する細菌群(例:Bifidobacterium属やBacteroides属)の活動をサポートする可能性があります。
  3. バランスの良い食事
    加工食品や高脂肪・高糖分の食品は腸内細菌叢に悪影響を与えるため、栄養バランスの取れた食事を心がけることが重要です。
  4. 生活習慣の改善
    適度な運動、十分な睡眠、ストレスの管理も腸内環境の安定に寄与します。これにより、全身のホルモンバランスや免疫機能が整い、生殖活動に好影響をもたらす可能性があります。
  5. 必要に応じたプロバイオティクスサプリメントの利用
    個々の状況に応じて、医師や専門家の指導のもとプロバイオティクスサプリメントを取り入れることで、腸内の善玉菌を効果的に補充することも一つの方法です。

これらの取り組みは、葉酸などのビタミンを腸内細菌が合成する機能にも好影響を与え、腸内細菌叢全体の多様性と安定性を高めると考えられています。結果として、健康な腸内環境は生殖活動をサポートする体質作りにも寄与すると期待されます。

腸内細菌叢を整えるメリット

腸内細菌叢を整えるということは、老化を防ぎ、あらゆる生活習慣病を予防し、ひいては認知症の予防にも繋がるという研究さえもあります。人間を宿主とした細菌たちとの共生関係が、私たちが健康に生活するに当たって大きな役割を担っています。脳と腸には大きな関係性があり、昔から日本人は「腹が立つ」「腹の虫の居所が悪い」などという慣用句を使ってきました。

近年の多くの研究では、腸脳相関と言われるように、腸内環境が乱れると、腸管バリアの透過性が増し、炎症性物質が血流を通じて脳に影響を及ぼす可能性が指摘されています。体内の免疫細胞が集まる器官であるということもあり、あらゆる生体活動にとって重要な地位を占めています。これらを意識して生活することが、妊活だけでなくあらゆる健康と密接に関係することになります。また腸内フローラを整えることは、妊娠後の胎児の発育にとっても、勿論大いなるメリットが期待できます。

このコラムの筆者
ZINEえぬたな

健康に気を付けながら、生涯現役を志向中!

"古典は常に新しい"をモットーとして、決して流行に左右されない厳選したあらゆるジャンルにおける定番名品を徹底解説しています。

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