パックTシャツというと、数枚セットで同梱された経済効率性の良い製品であるイメージ。日本の下着メーカーとして著名なグンゼ。その製品の中でもアウトドア志向なアンダーウェアブランドとして展開しているGTホーキンスのパックTシャツは、肌触りや着心地がとにかく素晴らしい。そしてGTホーキンスのサーフシャツはノースリーブのTシャツとして、愛用者に根強く支持されている製品である。着心地や肌触りの良さはグンゼの名に恥じぬ格別なるもの。
メンズの場合、いわゆるランニングシャツとかタンクトップという枠組みではスリーブレスな下着の選択肢も比較的多い。しかしながら首元の締まった丸首仕様のTシャツにおいては、その選択肢の幅も少しずつ縮小しているように感じるところ。そんな状況下にあって長年支持され続けているグンゼのGTホーキンス、サーフシャツは希少な存在となりつつあるに違いない。同じくパックTの中には、世界の同業他社にも選択肢があるが、それでもクラシカルで良質なスリーブレスのパックTとなれば、唯一無二の存在感。
最高の着心地、GTホーキンスのサーフシャツHK10182レビュー。
特に汗ばむ季節には、ただの一枚で着こなすというのも一興であるし、部屋着としての快適性、ポテンシャルの高さと言ったら素晴らしいものがある。そうした意味では、唯一無二の存在感。しかしながら、このサーフシャツでさえもカラーバリエーションの選択肢は以前と比べて少なくなっているのが現状である。白と黒と杢グレーという三色が現状のラインナップ、カラー展開となっている。また胸元にロゴの入ったものと完全に無地のものが存在しているが、生地感などの違いは特に無いようである。
サイズ3種類 | M | L | LL |
カラー3種類 | 白 | 黒 | 杢グレー |
綿100%の天竺素材でドライな着心地、横脇で縫い合わせない丸胴仕様であるから、シルエットが立体的で縫製箇所による敏感な肌であっても負担が少ない。アメリカンなTシャツ然としていて、見た目にも心地よい。クラシカルなボックスシルエットで着丈も長すぎず短すぎず、インナーとしても動きで裾がボトムスから飛び出さずにストレスも少ない。サイズ展開はM、L、LLの3パターンと少々少なめ。ただし普段よりも少し大きめのサイズ感であっても、大して問題は無いところであるし、ザックリとした着心地を期待するならば特に丁度良い製品である。
このサーフシャツの良いところは、通常のTシャツとタンクトップの中間の位置づけにあるところ。夏場であれば、冷房や扇風機などの空調設備が整った環境でゆっくりと過ごしていたり、または寝ていても、肩が冷えすぎずに、それでいて袖ありTシャツよりも涼しく過ごすことが出来るという利点がある。かといってタンクトップ程に肩が飛び出ている訳でも無く、首元が詰まっており、比較的上品さも保たれる。
暑い夏のアウターにも、最高の家着としても。コーデの脇役に。
夏の盛り、蒸し暑い日に、袖の無いTシャツは最高の過ごしやすさを手に入れることができる。このサーフシャツの真骨頂は、インナーとしての活躍は勿論であれど、アウターとして用いることも可能であるということである。一般的なタンクトップ、ランニングなどでは気恥ずかしい場合にでも、このTシャツならば特段問題にならない。
また家過ごすことを考えれば、暑い日にはこのシャツをついつい手に取ってしまうこと間違いない。優れた肌触りや吸水性、または袖なしの清々しさを一度実感すると病み付き的なお気に入りとしての地位を得ることは想像に難くない。とりあえずパックTの1セットを購入しておくと、いつの間にかこのサーフシャツの虜になっている。
軽くて全く肩肘張らずに過ごすことができるため、感覚としては服を着ていないのと変わらぬほどに、いやそれ以上に快適に過ごすことができる。そのまま寝巻きとしても最適。洗い替えも確保しつついつでも着ていたい着心地。安価なパックTとしては、最良なる選択肢である。しかも何度洗っても中々へたり難いというのも凄い。
G.T.HAWKINS。年中活躍する、インナーウェアとしても。
それにTシャツのインナーとして着合わせるのも手。例えばチャンピオンの名品、T1011などに組み合わせるのも良い。首元が少し開いたアイテムとの相性は抜群。クルーネックを活かしたチラ見せの重ね着を楽しむことができる。しかもそうすることで、首元の締まった上品な佇まいを演出することができるばかりか、カラーコーデなどで色合わせやワンポイントになったりする。勿論、暑い時にはアウターを脱いでも涼やかに過ごすというのでも良い。そのように考えると非常に使い勝手が良い。
首が詰まっていて袖が無い。たったそれだけの事なのに、使い勝手の良さは秀逸である。Tシャツがルーズでビッグなシルエットで首元が開いていたとしたら、サーフシャツの首元のチラ見せスタイルで上品に昇華できる。しかもその際であっても、暑くなりすぎずに汗はしっかり吸収してくれる。アウターが半袖であっても重ね着をして袖口が見えないというのも好い。これによって半袖の袖捲りするような着こなしをしても、インナーが見えない。
また春や秋といった季節柄、コーデが難しい季節にはデニムジャケットの下に着るインナーとしても活躍する。シャツのようにGジャンを羽織りながらインナーで袖なしTシャツ。意外にも過ごし易い恰好となる。そんなこんなで、常に着ていたいお気に入りのアイテムになるのは間違いない。
薄すぎず、厚すぎず、絶妙オンスな生地感。白Tの乳首透け感。
また実はバインダーネックが採用されたタフネスな仕様であるBVD社のスリーブレスGOLDという製品も存在しているが、生地はより薄く、透け感が否めないところ。アンダーウェアとして展開されている商品であるから当然であるが、インナーとしては良質な代替製品と成り得るが、アウターとしても活用する事を考えるとGTホーキンスのサーフシャツの存在価値は大きい。かといって、生地の厚みは6.1オンスのビーフィーTよりも薄手であるが、それでもそれなりに厚みある生地感を備えている。
一枚で着る事を考えると、白色であっても胸を張ったりしなければ、特段乳首の透けなどを気にすることも無い。ただし、肌と生地を密着させるとほんの少しだけ透けている気がする程度。白を選択する場合のみは、ワンサイズ大きめを選択するというのも一興。透け感自体のそうした部分まで特に憂慮する場合には、黒か杢グレーを選択すると無難に良い。この場合、一切透ける事を気にする必要は無い。ただし杢グレーの場合は、水分吸収の折に水や汗の染み感が出てくることは否めない。そうした事柄をすべて重要視するならば、黒を選択するに限るといったところ。
GTホーキンスのTシャツ、サイズ感。ビーフィーTと比較。
GTホーキンスのTシャツは、クラシカルなボックスシルエット。ざっくり、ゆったりと着こなすというほうがしっくりくる。身長約170cm、体重約60kg弱程度の標準体型であれば、Mサイズは丁度良く着こなすことが出来る。そうして締め付けすぎず、涼し気で動き易い。Lサイズは勿論、それよりもゆったりとした着用感であるが、それでも特段大きすぎずに着用感自体は好みの問題となる。ちなみに個人的に白色はLサイズ、杢グレーと黒色はMサイズを選択して愛用している。
ところで同じくクラシカルなボックスデザインをしている名品、ヘインズ社のヘビーウェイトなパックTシャツあるビーフィーTと比較してみても、サイズ感はそれほど変わらず、寧ろ同等のものと考えて良い。それぞれに生地感の違いなどによってアイデンティティが備わっているが、いずれも素晴らしいクオリティのTシャツ製品であることは間違いない。西洋のヘインズ、東洋のグンゼとでも喩えたくなる素晴らしい品々だ。ちなみにビーフィーTシャツにあっては、タグが縫い付けられていないが、グンゼのGTホーキンスの場合は、首の後ろ付近にタグが縫い付けられている。
サーフシャツ以外のラインナップ。VネックやクルーネックTシャツ。
GTホーキンスのTシャツには、その他のラインナップも存在し、通常のクルーネックTシャツやVネックのTシャツなどの選択肢も用意されている。生地感はいずれも秀逸な着心地が保証されていて、とても気持ちが良い肌触り。ちなみにGTホーキンスのVネックの場合は、より鋭いV字ラインをしていることから、シャツなどとの相性も良い。
サーフシャツとは。クルーネックでスリーブレスなTシャツ。
サーフシャツは、Tシャツから袖だけを取り除いた形のシャツであると考えると良い。タンクトップよりも肩回りまでは生地が覆ってくれている事から、脇汗も吸収してくれるし、肩冷えからも保護してくれる。二の腕より先の部分が露出している為、暑い日にTシャツの袖を肩まで捲り上げた状態と同様の事。しかも丸首仕様であることから首元や胸元もしっかりと詰まっており、それよりも上品に着こなすことが出来るし、通常腋下が露わになる心配もないというのも利点と成り得る。
勿論、タンクトップにも総リブ仕様のアヴィレックスのような名品が存在していたりするところである。これらは好みや使い道の問題であるが、GTホーキンスのサーフシャツならば、どのような体形であっても、外で着ていて違和感も少ない。Tシャツ同様の感覚で着用しやすい上に、着こなしとしてもコーディネートしやすいという部分もある。他にも、重ね着した時の首元におけるチラ見せインナーとしても活用できるし、スウェットシャツやボートネックなど首元が開いた衣服に合わせても好印象。ただし、いずれもマッスルアイテムとして重宝される逸品だ。
グンゼの歴史とは。GTホーキンスとの関係。
日本のアンダーウェアメーカーとして、ワコールと並んで著名なグンゼの歴史は、創業者の波多野鶴吉氏が1896年に郡是製絲株式会社を設立した事に始まる。旧何鹿郡、現在の京都府綾部市にて庄屋の次男坊として生まれた彼は、幼少期に波多野家へ養子として迎え入れられた。その後は事業の失敗などで養家の財産を使い果たし、生まれ故郷である旧何鹿郡で教員としての再出発を果たす。そこで小学校教員をしている中で、地場産業でもあった養蚕農家の子供たちの貧しい暮らしと実態を知り、地域貢献を志して地元の蚕糸業組合長へと就任する。
国是や県是、郡是や村是を定める事が急務であるという薩摩藩出身で殖産興業の父とも称される前田正名氏の言葉に感銘を受けた波多野氏は、何鹿郡にとって蚕糸業が郡是になり得ると考えた。そうして設立されたのが郡是製絲株式会社であった。彼の思想では、「善き人が良い糸を作り、信用される人が信用される糸を作る。」というものがあった。教育者でもあった彼は、会社というより学校であるとも噂されるほど人材教育に力を入れた。その行為は実際に良質な製品を生み出し、その信用によって成長を遂げていく土壌となった。
当初生糸を生業に生産活動を行なっていたグンゼであったが、戦後には蚕糸業も下火となり、木綿の下着を生産。同時に巷では安かろう悪かろうの粗悪品が横行していた。そのような状況下においても、創業者の思想は決して失われず、「品質第一」「共存共栄」「一貫生産体制」によって市場の信用を獲得し続けた。グンゼによって当時販売されていたメリヤス下着というものは、市場に流通する他製品と比べても割高に設定されていたものであるが、「金の品質、銀の価格」と謳われて支持を拡大していく事となった。この精神は現代におけるアパレル事業にも引き継がれ、社是ともなっているものである。
ところで、GTホーキンスは英国の靴メーカーでジョージ・トーマス・ホーキンス氏によって1850年に創業された。1885年には王室御用達となり、その後ボーア戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争などで軍用ブーツやパイロットブーツなどを生産。そうしたミリタリー用途にも対応できるノウハウを持って、寒冷用で耐水性や耐久性に優れたブーツ開発。その後、同社においてウォーキングブーツやキャンピングブーツは1980年代頃の主力商品となったようである。2000年代に入ってからは経営難により日本のABCマートに買収される事となった。GTホーキンスはアウトドアブランドシューブランドで、グンゼのGTホーキンスの方もそれに準拠している。
ちなみにグンゼのGTホーキンスというブランドは、グンゼがホーキンスとのライセンス契約によって使用している名称であって、直接的な関係性は特に無い。その品質はパックTとして非常に高く、綿100%であるが故の着心地も抜群である。そうした意味においてもグンゼの信用に足る良品である。毎日ヘビーに使い、洗濯を繰り返したところで生地は強く、くたびれ難い。しかも首元も同様にヨレる心配もなく、長年愛用することが出来るタフな代物である。